古着やアンティーク衣類の年代を調べるとき、ボタンは重要な手がかりになります。
ボタンには、素材、形、穴の数、裏面の作り、刻印、製法など、その時代ごとの特徴が表れやすいからです。
ただし、ボタンだけで衣服全体の年代を断定することはできません。
ボタンは取れたり壊れたりしやすく、後年に交換されている場合も多いためです。
また、現代の復刻品では、あえて古い時代のボタンを再現していることもあります。
そのため、ボタンの年代判別では、ボタン単体を見るのではなく、タグ、縫製、生地、ジッパー、ボタンホールの摩耗などと合わせて総合的に判断することが大切です。
この記事では、ボタンの特徴から年代を見分けるための基本的なポイントを、素材・形状・製法・刻印などの観点から詳しく解説します。
ボタンの年代判別で見るべきポイント
ボタンの年代を推定するときは、主に次のような点を確認します。
- 素材
- 穴の数
- ボタンの形状
- シャンクの有無
- 裏面の作り
- 製法
- 刻印やバックマーク
- 衣服全体との整合性
この中でも特に重要なのが、素材と製法です。
たとえば、セルロイド、ベークライト、カゼインなどの初期プラスチック素材は、19世紀後半から20世紀前半のボタンを見分ける手がかりになります。
また、金属ボタンの場合は、裏面のシャンクや刻印、メッキの状態などが年代推定のヒントになります。
ただし、素材や形状だけで年代を決めつけるのは危険です。
同じ素材が長い期間使われていることも多く、後年の復刻品や交換品も存在します。
あくまで複数の要素を組み合わせて判断する必要があります。
素材によるボタンの年代判別
金属ボタン
金属ボタンは非常に古くから使われてきた素材です。
軍服、制服、礼装、コート、ジャケットなどに多く見られ、アンティークボタンの中でも代表的な存在です。
金属ボタンには、真鍮、銅合金、鉄、ピューター、トンバックなど、さまざまな素材があります。
古い金属ボタンでは、鋳造、打ち抜き、プレス、メッキ、ギルディングなどの製法が使われていることがあります。
金属ボタンを見るときは、表面のデザインだけでなく、裏面の作りを確認することが重要です。
裏側のシャンクの形、金属の厚み、接合方法、刻印の有無などが年代推定の手がかりになります。
特に軍服や制服のボタンでは、裏面にメーカー名、都市名、国名、品質表示などが刻まれている場合があります。
こうした刻印は、製造会社の操業時期や刻印パターンと照合することで、年代を絞り込む材料になります。
ただし、金属ボタンは現代でも多く使われています。
金属製だから古い、重いから古い、作りが粗いから古い、と単純に判断することはできません。
金属ボタンの場合は、素材そのものよりも、裏面構造・刻印・製法・衣服全体との整合性を重視しましょう。
貝ボタン・シェルボタン
貝ボタンは、シャツ、ブラウス、下着、ワークウェアなどに広く使われてきた素材です。
特に19世紀後半から20世紀前半の衣類では、白蝶貝、高瀬貝、淡水貝などのボタンが見られます。
貝ボタンの特徴は、真珠のような自然な光沢です。
光に当てると、プラスチックの模造品とは違う、奥行きのある虹色の反射が見えることがあります。
また、裏面に貝特有の筋や層が見える場合もあります。
古い貝ボタンでは、厚みや形がわずかに不均一だったり、穴の周辺や縁の仕上げが現代品ほど均一でなかったりすることがあります。
ただし、高級衣類に使われた古い貝ボタンには、非常に精密に加工されたものもあります。
貝ボタンは現在でも使われているため、貝であることだけでは年代を判断できません。
シャツのタグ、襟型、縫製、ステッチ、ボタンホールの摩耗などと合わせて確認することが大切です。
木製ボタン
木製ボタンは、カーディガン、コート、民族衣装、ナチュラル系の衣類、アウトドア系アイテムなどに使われてきました。
また、物資不足の時代や戦時中の衣類に見られることもあります。
木製ボタンには、木目、軽さ、自然な風合いがあります。
古いものでは、表面の塗装が剥げていたり、角が丸く摩耗していたり、手作業で削ったような不均一さが残っていることがあります。
ただし、木製ボタンも現代衣類でよく使われる素材です。
ナチュラル系やクラフト系のデザインでは、あえて古風な雰囲気の木製ボタンが使われることもあります。
そのため、木製ボタンの年代を判断するときは、木目や摩耗だけでなく、衣服の生地、縫製、糸の劣化、タグなども合わせて確認する必要があります。
骨・角・ホーンボタン
骨、角、水牛角などの天然素材ボタンは、古い衣類から現代の高級衣料まで幅広く使われています。
ジャケット、コート、スーツ、ワークウェアなどで見られることが多い素材です。
角やホーンのボタンは、茶色、黒、飴色、まだら模様など、自然な色の変化が特徴です。
プラスチックの模造品と比べると、模様に不規則さがあり、光を通したときに独特の透明感が出るものもあります。
骨ボタンは、白や黄味がかった色をしており、細かな筋や孔のようなものが見える場合があります。
ただし、天然素材だから古いとは限りません。現在でも高級ジャケットやコートには本水牛ボタンなどが使われます。
年代判別では、素材だけでなく、加工の精度、色の変化、摩耗、縫い付け糸、衣服全体の年代感を合わせて見る必要があります。
なお、歴史的には象牙ボタンも存在しますが、現代では取引規制や倫理面の問題があります。
記事内で扱う場合は、売買を促すような表現を避け、歴史的素材として慎重に触れるのがよいでしょう。
陶製ボタン・チャイナボタン
19世紀のボタンを語るうえで重要なのが、白色系の陶製ボタンです。
いわゆるチャイナボタンや、プロッサー成形ボタンと呼ばれるものが代表的です。
プロッサー成形ボタンは、19世紀中頃に普及した陶製ボタンで、白色のものが多く見られます。
2穴や4穴のものがあり、裏面に小さなピンホール状の痕が見られる場合があります。
このタイプのボタンは、見た目が白く不透明なため、ガラスボタンやミルクガラスと混同されることがあります。
しかし、正確には陶製・磁器系のボタンとして扱う方が適切です。
19世紀の衣類やアンティークボタンを判別する場合は、白い不透明なボタンをすぐに「ガラス」と判断せず、陶製ボタンの可能性も考える必要があります。
ガラスボタン
ガラスボタンは、婦人服、装飾用ボタン、喪服用ボタンなどに使われてきました。
特に黒いガラスボタンは、ヴィクトリアン期の喪服文化と関連して語られることがあります。
ガラスボタンは、プラスチックよりも重みがあり、触ると冷たい感触があります。
表面には強い光沢があり、透明、半透明、不透明、黒、色付き、カット装飾入りなど、さまざまな種類があります。
古いガラスボタンでは、裏面に成形痕や気泡が見えることもあります。
ただし、ガラスボタンも現代の装飾ボタンとして作られているため、素材だけで年代を決めることはできません。
ガラスボタンを判別するときは、衣服のデザイン、縫製、使用箇所、裏面の処理、ほかのパーツとの整合性を確認しましょう。
セルロイドボタン
セルロイドは、ボタンの年代判別で非常に重要な素材です。
19世紀後半に登場した初期プラスチックの一つで、象牙、べっ甲、貝、角などの天然素材を模倣する目的で広く使われました。
セルロイドボタンは、軽く、独特の半透明感や模様を持つものがあります。
べっ甲風、象牙風、貝風、マーブル調など、天然素材に似せたデザインが多く作られました。
年代の目安としては、セルロイドは1870年代以降に登場し、19世紀末から20世紀前半に広く使われた素材と考えるとよいでしょう。
資料によっては、ボタン製造では1950年代頃まで広く使われたと説明されることもあります。
そのため、セルロイドボタンについては、単純に「1940年代まで」と限定するよりも、1870年代以降から1950年代頃までを含めて考える方が安全です。
ただし、セルロイドは可燃性が高い素材です。
素材判別のために火を近づけたり、熱した針を当てたりする方法は危険であり、ボタンを傷める原因にもなります。
一般的な判別では、見た目、重さ、質感、経年変化、衣服全体との整合性から判断するのが望ましいです。
ベークライトボタン
ベークライトは、20世紀初頭に登場した初期の合成樹脂です。
フェノール樹脂系の素材で、ヴィンテージボタンやアクセサリーの分野ではよく知られています。
ベークライトボタンは、1920〜1940年代のヴィンテージ品に多く見られます。
広く見れば、1930〜1950年代頃のボタンやアクセサリーとして扱われることもあります。
特徴としては、現代の軽いプラスチックとは異なり、硬さや重みがあり、色に深みがあります。
茶色、黒、赤茶、黄土色、緑、マーブル調など、独特の落ち着いた色合いを持つものが多く見られます。
ただし、ベークライトはカタリンなどの近い素材や、後年のベークライト風樹脂と混同されることがあります。
見た目だけでベークライトと断定するのは難しいため、年代判別では慎重に扱う必要があります。
記事で説明する場合は、次のように書くと安全です。
ベークライトは20世紀初頭に登場した初期合成樹脂で、ボタンでは1920〜1940年代のヴィンテージ品に多く見られます。ただし、類似素材や後年の復刻品もあるため、見た目だけで断定するのは避けましょう。
カゼイン・ガラリス系ボタン
カゼイン樹脂やガラリスは、ミルク由来のたんぱく質を使った初期プラスチック系素材です。
1890年代に成立し、20世紀前半のボタン、バックル、アクセサリーなどに広く使われました。
カゼイン系ボタンは、貝、角、象牙などの天然素材を模したものが多く、柔らかい色合いを持つことがあります。
湿気や水に弱い性質があり、古いものでは表面が白っぽくなったり、ひび割れたりすることもあります。
ヴィンテージ市場では、1920〜1940年代のカゼインボタンがよく取り上げられます。
ただし、素材の歴史としては1890年代から始まり、20世紀前半を中心に、1950年代以降の使用例もあります。
そのため、カゼインやガラリスについては、1920〜1940年代に限定せず、1890年代成立・20世紀前半中心の素材として説明する方が正確です。
現代的なプラスチックボタン
第二次世界大戦後、とくに1950年代以降は、大量生産に適した合成樹脂ボタンが一般化していきます。
シャツ、ジャケット、コート、制服、作業着など、さまざまな衣類にプラスチックボタンが広く使われるようになりました。
現代的なプラスチックボタンは、軽く、形が均一で、同じ服についているボタン同士の色や厚みも揃っていることが多いです。
裏面には成形時の跡や型の合わせ目が見える場合があります。
ただし、プラスチック製だから新しいとは限りません。
セルロイド、カゼイン、ベークライトなどの初期プラスチックは、19世紀後半から20世紀前半にすでに使われていました。
そのため、プラスチックボタンを見たときは、単に「プラスチック=戦後品」と考えるのではなく、素材の種類や質感を確認することが大切です。
形状によるボタンの年代判別
2穴ボタン
2穴ボタンは、古い時代から現代まで幅広く使われている基本的な形です。
シャツ、下着、ブラウス、ワークウェアなどでよく見られます。
2穴だから古い、または新しいと判断することはできません。
ただし、古いボタンでは、穴の位置がわずかに不揃いだったり、穴の縁の加工が現代品ほど整っていなかったりすることがあります。
2穴ボタンを見る場合は、素材、厚み、穴周りの処理、衣服の縫製と合わせて判断しましょう。
4穴ボタン
4穴ボタンも、非常に一般的なボタンです。
シャツ、ジャケット、ワークウェア、軍服、制服など幅広く使われています。
4穴ボタンは、2穴ボタンよりも丈夫に縫い付けられるため、実用性を重視した衣類にも多く見られます。
ただし、4穴であること自体は年代の決め手にはなりません。
古いものにも現代品にも存在するため、素材や製法、裏面の状態、縫い糸、ボタンホールの摩耗などを合わせて見る必要があります。
猫目ボタン
ヴィンテージ古着でよく注目されるのが、猫目ボタンです。
中央部分が横長にくぼんでおり、猫の目のように見えることからこの名前で呼ばれます。
猫目ボタンは、1930〜1950年代頃のワークウェアやミリタリー系古着で、年代推定の手がかりとして扱われることがあります。
中央のくぼみによって糸が擦れにくく、実用性の高い仕様とされています。
ただし、猫目ボタンは現代の復刻品にも非常によく使われています。
アメカジブランドやヴィンテージレプリカでは、古い雰囲気を出すために猫目ボタンを採用することが多いです。
そのため、猫目ボタンが付いているからといって、必ず1930〜1950年代の衣類とは限りません。
判断するときは、タグ、縫製、生地、糸、ボタンホールの摩耗、ほかのパーツとの整合性を確認する必要があります。
シャンク付きボタン
シャンクとは、ボタンの裏側にある足や輪のことです。
表面に穴が開いているボタンとは異なり、裏側のシャンクに糸を通して縫い付けます。
シャンク付きボタンは、コート、ジャケット、軍服、礼装、装飾ボタンなどに多く見られます。
特に18〜19世紀の金属ボタンやアンティークボタンでは、シャンクの形が年代判別の重要な手がかりになることがあります。
シャンクの種類には、鋳造されたもの、ワイヤーを埋め込んだもの、ループ状のもの、一体成形のものなどがあります。
ただし、20世紀以降の衣類では、シャンクの形だけで年代を細かく判断するのは難しくなります。
シャンクはあくまで補助的な情報として見て、素材、刻印、衣服全体の年代感と合わせて考えましょう。
製法によるボタンの年代判別
手作業感のあるボタン
古いボタンには、厚みがわずかに不均一だったり、穴の位置が完全には揃っていなかったり、縁の仕上げに手作業らしい揺らぎが見られるものがあります。
こうした不均一さは、年代推定の手がかりになることがあります。
ただし、現代のクラフトボタンや復刻ボタンでも、あえて手作業風に作られている場合があります。
逆に、古い高級ボタンには非常に精密なものもあります。
そのため、「作りが粗いから古い」と決めつけるのは避けましょう。
手作業感はあくまで一つのヒントです。
プレス・打ち抜き・鋳造
金属ボタンやガラスボタン、樹脂ボタンでは、プレス、打ち抜き、鋳造などの製法が使われます。
金属ボタンの場合、表面はプレスで模様が付けられ、裏側に別パーツを接合しているものもあります。
古いボタンでは、パーツの接合方法や裏面の処理に時代性が出ることがあります。
また、鋳造されたボタンでは、裏面や縁に鋳造痕が残ることがあります。
こうした製法上の痕跡は、素材やデザインと組み合わせることで年代推定の参考になります。
射出成形
現代的なプラスチックボタンでは、射出成形が多く使われます。
射出成形のボタンは、形が均一で、同じ服に付いているボタン同士のばらつきが少ないのが特徴です。
裏面に小さなゲート跡や型の合わせ目が見える場合もあります。
軽くて均一なプラスチックボタンは、比較的新しい大量生産品である可能性があります。
ただし、これも単独では判断できません。
現代的な成形跡がある場合は、タグや品質表示、縫製仕様などと合わせて確認するとよいでしょう。
裏面刻印・バックマークによる年代判別
ボタンの裏面に文字やマークが入っている場合、それは年代判別の大きな手がかりになります。
裏面刻印には、次のようなものがあります。
- メーカー名
- ブランド名
- 国名
- 都市名
- 商標
- 品質表示
- 軍需メーカー名
- サイズや番号
特に軍服ボタン、制服ボタン、メタルボタンでは、裏面刻印から製造会社や製造国を調べられる場合があります。
メーカーの操業期間や刻印の変遷が分かれば、年代をかなり絞り込めることもあります。
ただし、「BEST QUALITY」や「SUPERIOR QUALITY」のような一般的な品質表記だけでは、年代を確定するのは難しいです。
また、古いボタンが後年の衣服に付け替えられている可能性もあります。
裏面刻印は有力な情報ですが、衣服全体の状態と照合して判断することが重要です。
年代別に見るボタンの特徴
17〜18世紀
金属、骨、角、木、貝、ガラス、陶製などの素材が使われていました。
特に金属ボタンでは、シャンクの形や製法が年代推定の手がかりになります。
この時代のボタンは、衣服の装飾性や身分表現とも関わりが深く、実用品であると同時に装飾品としての性格も強く持っていました。
18世紀後半〜19世紀初頭
金属ボタンのシャンク形式に年代差が出やすい時期です。
鋳造されたシャンク、ワイヤーを埋め込んだシャンク、ループ状のシャンクなど、裏面構造の違いが年代判別の材料になります。
この時期のボタンを調べる場合は、表面のデザインよりも、裏面の構造をよく見ることが大切です。
19世紀中頃
19世紀中頃には、陶製ボタン、チャイナボタン、プロッサー成形ボタン、貝ボタン、金属ボタンなどが広く使われました。
白色系の小さな陶製ボタンは、シャツや下着類などで見られることがあります。
裏面のピンホール状の痕や、陶製特有の質感が判別のヒントになります。
19世紀後半
19世紀後半になると、セルロイドなどの初期プラスチック系素材が登場します。
セルロイドは、象牙、べっ甲、貝、角などの天然素材を模倣できる素材として注目され、ボタンや装飾品に使われました。
この時期以降、ボタン素材の幅は大きく広がります。
1900〜1920年代
1900〜1920年代には、セルロイド、カゼイン、貝、金属、ガラス、陶製、天然素材など、さまざまなボタンが混在します。
天然素材と初期プラスチック素材が併用されていたため、この時期のボタンは素材判別が難しいことがあります。
貝風、べっ甲風、象牙風に見えても、実際にはセルロイドやカゼインである場合があります。
1920〜1940年代
1920〜1940年代は、ベークライト、カゼイン、セルロイドなどの初期プラスチック系素材が目立つ時期です。
ベークライトボタンは、硬さや重み、深みのある色合いが特徴です。
装飾的なボタンやアクセサリー的なボタンも多く作られました。
ただし、ベークライトとカタリン、カゼイン、後年の樹脂素材は混同されやすいため、見た目だけで断定しないことが大切です。
1930〜1950年代
1930〜1950年代頃のワークウェアやミリタリー系古着では、猫目ボタンが年代推定の手がかりとして扱われることがあります。
また、セルロイド、カゼイン、ベークライト、尿素樹脂系のボタンなど、さまざまな樹脂素材が使われていました。
ただし、この年代の仕様は現代の復刻ブランドでもよく再現されています。
猫目ボタンや古風な樹脂ボタンが付いていても、それだけで当時物と判断するのは避けましょう。
1950年代以降
1950年代以降は、より大量生産に適した合成樹脂ボタンが一般化していきます。
形状が均一で、軽く、コストを抑えたプラスチックボタンが多く見られるようになります。
シャツ、ジャケット、コート、制服、作業着など、幅広い衣類で現代的なプラスチックボタンが普及しました。
ただし、1950年代以降も天然素材や金属ボタンは使われ続けています。
年代を判断するときは、ボタンだけでなく、品質表示タグや縫製仕様も合わせて確認することが重要です。
1980年代以降
1980年代以降は、ボタンの素材やデザインがさらに多様化します。
ブランドロゴ入りボタン、金属調ボタン、天然素材風プラスチックボタン、装飾性の高い樹脂ボタンなどが増えました。
また、ヴィンテージブームやアメカジ人気の影響で、古い時代の仕様を再現した復刻ボタンも多く作られています。
そのため、1980年代以降の衣類では、あえて古い雰囲気のボタンが使われている場合もあります。
ボタンの見た目だけで古着の年代を判断するのは、特に注意が必要です。
ボタンで年代判別するときの注意点
ボタンは交換されやすい
ボタンは衣服の中でも特に交換されやすいパーツです。
洗濯や着用で取れたり、破損したりするため、古い服に新しいボタンが付いていることもあります。
逆に、新しい服に古いボタンが後付けされている場合もあります。
アンティークボタンやヴィンテージボタンをリメイク目的で付けるケースもあるため、ボタンだけを見て衣服全体の年代を決めるのは危険です。
復刻品が多い
猫目ボタン、ベークライト風ボタン、ナットボタン、メタルボタンなどは、現代の復刻古着やアメカジブランドでもよく使われています。
復刻品は、見た目だけでは古いボタンに見えることがあります。
そのため、ボタンの雰囲気だけで判断せず、タグ、品質表示、縫製、ステッチ、生地、ジッパーなどを総合的に見る必要があります。
素材の誤認に注意する
ボタンの素材は、見た目だけでは判別が難しいことがあります。
たとえば、べっ甲風に見えるボタンがセルロイドだったり、貝風に見えるボタンがカゼインだったり、ベークライトと思ったものが別のフェノール樹脂や後年の樹脂だったりすることがあります。
特に初期プラスチック素材は混同されやすいため、断定的な表現は避けた方が安全です。
危険な判別テストは避ける
セルロイドやベークライトなどの素材判別では、加熱した針を当てる方法や、薬品を使う方法が紹介されることがあります。
しかし、こうした方法はボタンを傷めたり、変色させたり、火災や有害な煙の原因になったりする可能性があります。
特にセルロイドは可燃性が高いため、火を近づけるのは危険です。
一般的な年代判別では、無理に素材テストを行わず、見た目、質感、重さ、経年変化、衣服全体との整合性から判断するのがよいでしょう。
実際にボタンの年代を調べる手順
ボタンの年代を調べるときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
素材を確認する
まず、金属、貝、木、骨、角、陶製、ガラス、セルロイド、ベークライト、カゼイン、現代プラスチックのどれに近いかを見ます。
素材が分かると、おおまかな年代の範囲を絞ることができます。
形状を確認する
次に、2穴、4穴、猫目、シャンク付き、ドーム型、フラット型、装飾型など、ボタンの形を確認します。
特に猫目ボタンやシャンク付きボタンは、古着やアンティークボタンの年代推定でよく注目されます。
裏面を見る
裏面には、年代判別のヒントが多くあります。
刻印、メーカー名、国名、シャンクの形、成形跡、接合方法、削り跡などを確認しましょう。
表面だけでは新旧が分かりにくいボタンでも、裏面を見ると製法や素材の特徴が分かることがあります。
縫い付け糸を見る
ボタンを付けている糸も重要です。
ほかのボタンと糸の色が違う、縫い方が違う、糸だけ新しく見える場合は、後年に交換されている可能性があります。
本来のボタンであれば、衣服全体の摩耗や糸の劣化とある程度一致していることが多いです。
ボタンホールの摩耗を見る
長年使われたボタンであれば、ボタンホールにも摩耗が出ます。
ボタンだけ古く見えるのに、ボタンホールがほとんど摩耗していない場合は、交換品や後付けの可能性があります。
逆に、ボタンは新しく見えても、ボタンホールが古く摩耗している場合は、古い衣服に新しいボタンが付け替えられている可能性があります。
衣服全体と照合する
最後に、タグ、品質表示、ジッパー、縫製、生地、ステッチ幅、シルエットなどと照合します。
ボタンの年代感と衣服全体の年代感が一致していれば、判断の信頼度は高くなります。
反対に、ボタンだけが古く見える、または新しく見える場合は、交換やリペアの可能性を考えましょう。
まとめ
ボタンの特徴は、古着やアンティーク衣類の年代を推定するうえで重要な手がかりになります。
金属ボタンでは裏面のシャンクや刻印、貝ボタンでは光沢や加工、陶製ボタンでは質感や裏面の痕、セルロイドやベークライト、カゼインなどの初期プラスチックでは素材特有の風合いが判断材料になります。
年代の目安としては、セルロイドは1870年代以降から1950年代頃まで、カゼイン・ガラリスは1890年代成立で20世紀前半を中心に使用、ベークライトは1920〜1940年代のヴィンテージボタンに多く見られます。
猫目ボタンは1930〜1950年代頃のワークウェアで年代推定の手がかりになることがあります。
ただし、ボタンは交換されやすく、復刻品も多いパーツです。
そのため、ボタン単体で年代を断定するのではなく、タグ、縫製、生地、ジッパー、ボタンホール、縫い糸などと合わせて総合的に判断することが大切です。
ボタンは、衣服の年代を決める唯一の証拠ではありません。
しかし、正しく観察すれば、古着やアンティーク衣類の背景を読み解くための有力な手がかりになります。
以上、ボタンの特徴による年代判別についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。









