スーツの縫い目は見た目や耐久性、着心地に大きく影響する重要な要素です。
以下では、構造や種類、役割、メンテナンス視点まで含めて詳しく解説します。
目次
縫い目の役割
スーツの縫い目は、単に布をつなぎ合わせるだけでなく、形状・強度・デザイン性を左右します。
- 立体的なシルエットを作る
特にジャケットは体にフィットするように曲線的なパターンを縫い合わせます。 - 耐久性の確保
生地が裂けないよう、縫い糸や縫い幅を調整。 - 装飾要素
見える縫い目はデザインラインとして機能し、表情を作ります。
縫い目の主要な種類
センターバックシーム(背中心)
- ジャケットやコートの後ろ中央を縦に走る縫い目。
- 役割:シルエット調整・体型補正・着丈のバランス取り。
- 特徴:高級スーツでは背中に沿ってわずかにカーブを描く。
サイドシーム(脇縫い)
- 前身頃と後身頃をつなぐ縫い目。
- 役割:ウエストラインを作り、フィット感を調整。
- 特徴:脇の下部分は運動量確保のため縫い代を広めに取ることが多い。
ショルダーシーム(肩線)
- 前身頃と後身頃の肩部分をつなぐ縫い目。
- 役割:肩の傾斜や前後バランスを決定。
- 特徴:職人仕立てでは前方に少し倒した「前肩縫製」で着心地を向上。
ダーツ
- 布をつまんで縫うことで立体感を出す縫い目。
- ジャケットでは腰ダーツ、パンツではヒップダーツが代表的。
- 役割:身体に沿ったラインを形成。
トップステッチ
- 表面に見える装飾縫い。
- 役割:補強とデザイン性を兼ねる。
- ドレス感を高めるピックステッチ(玉縁の端に細かいステッチ)もここに含まれる。
縫製方法と品質の違い
ミシン縫い
- 均一で早いが、柔らかい曲線や細かな微調整は手縫いより劣る。
手縫い
- 高級スーツで多用される。伸縮性があり、身体の動きに馴染む。
- 特徴的なのが「ハンドピックステッチ」や「手まつり」。
縫い代の処理
- ロックミシン処理:既製スーツで多い。
- パイピング処理:高級仕立て。内側まで美しく、耐久性も高い。
縫い目とスーツの耐久性
- 縫い目幅(ステッチピッチ)が広すぎると生地が裂けやすく、狭すぎると硬くなって動きにくい。
- 高級スーツは1インチ(約2.54cm)あたり8〜10針程度が多く、均一で美しい。
- 生地と糸の相性も重要で、ストレッチ素材なら伸縮性のある糸を使う。
メンテナンス視点
- ほつれ補修:早期に対処すれば縫い直しで済む。
- 縫い目の割れ(縫い代が開く):アイロンで割り直し可能。
- クリーニング時の注意:縫い糸の縮みによる波打ちを防ぐため、ドライクリーニング推奨。
見た目に効く「縫い目の見極めポイント」
- 縫い目がまっすぐで均一か。
- ステッチピッチが細かく揃っているか。
- 表側に糸の引きつりがないか。
- 裏側の縫い代処理が丁寧か。
以上、スーツの縫い目についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。