スーツの作り方は非常に複雑で、裁縫の中でも「最高峰の技術」が求められる分野です。
大きく分けると ①企画・デザイン → ②採寸・型紙作成 → ③生地裁断 → ④縫製 → ⑤仕上げ という流れで進みます。
それぞれの工程を詳しく解説します。
目次
企画・デザイン
スーツ作りはまず「どんなスーツを仕立てるか」を決めるところから始まります。
- 用途の決定:ビジネス用かフォーマル用(冠婚葬祭)、あるいはカジュアル寄りか。
- スタイルの選択:シングルかダブル、ラペル(襟)の形、ベント(後ろの切れ込み)の種類、ボタン数など。
- 生地の選定:ウール(最も一般的)、モヘア混紡、リネン、コットンなど。季節や目的に応じて選ばれます。
- 裏地やボタン:デザイン性を高める要素。特注する場合もあります。
採寸・型紙作成
オーダーメイドのスーツでは採寸が非常に重要です。
- 採寸ポイント:肩幅、胸囲、胴囲、腰回り、袖丈、股下、背丈など十数か所を測ります。
- 型紙作成:採寸値をもとに、個人の体型に合わせた型紙を作成。これがスーツの骨格になります。
- 補正:猫背、なで肩、O脚などの体型の癖も型紙に反映させます。
生地裁断
- 地の目合わせ:スーツの見栄えを左右するため、生地の織り目・柄(ストライプやチェック)を正確に合わせる。
- 芯地・裏地の用意:スーツは表地だけでなく、芯地(胸のハリを作る部分)や裏地も裁断します。
- 裁断道具:大型の裁ちバサミや電動裁断機を使い、型紙に合わせて切り出します。
縫製
スーツ作りの中で最も時間のかかる工程です。
- 仮縫い:まずは荒く縫い合わせ、体に合わせて試着。補正を加える。
- 本縫い:肩、袖、襟、身頃を縫い合わせる。肩のラインや胸の立体感を出すためにアイロンでクセ取りをしながら進めます。
- 芯据え:胸やラペルの形を整えるために馬の毛芯(毛芯)を縫い込み、立体感を作る。
- ボタンホール・ステッチ:手縫いで行うことが多く、高級スーツの仕上げポイント。
仕上げ
- 最終プレス:アイロンで全体を立体的に成形。スーツは「縫う」だけでなく「蒸気と熱で形を作る」工程が重要です。
- 付属の取り付け:ボタン、裏地のまつり縫い、ネーム刺繍など。
- 最終チェック:シルエット、バランス、着心地を確認し、必要があれば微調整。
スーツ作りの種類
スーツには製造方法によって大きく3つのカテゴリがあります。
- フルオーダー(ビスポーク):一から型紙を起こす。仕立て時間は2~3か月以上。最高級。
- パターンオーダー:既存の型紙をベースにサイズを調整する方式。比較的安価で数週間。
- 既製服(プレタポルテ):工場で大量生産される。安価で手軽だが体型に完全には合わない。
まとめ
スーツ作りは単なる「縫い合わせ」ではなく、採寸・型紙・裁断・縫製・プレスといった緻密な工程が積み重なった職人技です。
特にオーダーメイドでは体型の癖を反映させ、立体的なフォルムを作り出すことが最大の特徴です。
そのため、一着のスーツに数十時間以上の手間と経験が注ぎ込まれます。
以上、スーツの作り方についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。