ジャケットの表面にぽつぽつと現れる“毛玉(ピリング)”。
見た目が一気に古びて見えるだけでなく、放置すると生地の摩耗が進み、寿命を縮めてしまうこともあります。
ここでは、毛玉が生じるメカニズムから素材ごとの傾向、正しい取り方、絶対に避けたいNG行為、さらに予防策や購入時の見極めまで、総合的に解説します。
毛玉が生まれるメカニズム
毛玉は、表面に浮き出た毛羽が摩擦や静電気などの刺激を受けて絡み合い、球状に固まったものです。
- バッグのストラップ
- 机との擦れ
- 腕の振りや脇まわりの摩擦
- 髪やマフラーの接触
こうした日常動作の積み重ねが、少しずつ繊維を引き出し、やがて毛玉を形成します。
特に、繊維の“長さ・強度・太さ”といった特性が、毛玉のできやすさや残り方に大きく影響します。
素材別:毛玉ができやすい生地・できにくい生地
毛玉ができやすい素材
- 紡毛ウール(起毛感のあるウール)
毛羽が立ちやすく、摩擦の影響を受けやすい。 - アクリル
短繊維構造+静電気でホコリを引き寄せやすい。 - ポリエステル混紡
一度毛玉ができると硬く残りやすく、目立ちやすい。
比較的できにくい素材
- 梳毛ウール(スーツ地などの滑らかなウール)
毛羽立ちが少なく、摩擦の影響が出にくい。 - 長繊維ナイロン・ポリエステルのフィラメント糸
毛羽が出にくく、そもそも毛玉の元が生まれにくい。 - 高密度織の天然繊維(綿・麻など)
織りが密で、繊維が抜けにくい。
混紡は構造次第で毛玉が発生しやすい
強度の高い合成繊維(ポリエステル・ナイロン)と、弱い繊維(ウール・レーヨンなど)が混ざると、弱い繊維だけが表面に出て絡みやすくなり、毛玉につながることがあります。
正しい毛玉の取り方(生地を傷めない方法)
電動毛玉取り器(最も効率的で仕上がりが良い)
- 生地を軽く張る
- 押し付けず、滑らせるように動かす
- ガード付きの細かい刃を使用
- 段差(縫い目・ラペルなど)はゆっくり慎重に
ポリエステル混やウールジャケットの処理に特に向いています。
衣類用ブラシ(ウール・カシミヤに最適)
表面の毛流れを整えつつ毛玉のみ取り除けるので、繊細な生地と相性が良いです。
- 毛の流れに沿って軽くブラッシング
- 大きな毛玉はハサミで根元カット
- 最後にスチームで繊維を整えると美しい仕上がりに
カミソリ(ニット系のみ。ジャケットには推奨度低)
薄手の生地やスーツ地には向きません。
削りすぎて生地を痛める危険があるため、ジャケットでは基本的に避けたほうが安心です。
ハサミで慎重にカット(応急処置)
大きな毛玉を限定的に処理する場合のみ使います。
生地まで切らないよう細心の注意が必要です。
絶対に避けたいNG行為
- 粘着テープで引きはがす
→ 毛羽が余計に抜け、毛玉が加速。 - 電動毛玉取りを強く押し付ける
→ 織り目が傷み、テカリやスジの原因に。 - カミソリで広範囲を削る
→ 摩耗して白っぽくなりやすい。 - 指で引きちぎる
→ 繊維が根本から抜け、陥没したような跡が残る。
毛玉を予防するための日常ケア
ローテーションして着用する
同じジャケットを連日着ると、同じ部分に摩擦が集中します。
1日休ませるだけで毛羽立ちが落ち着き、毛玉ができにくくなります。
バッグのストラップに注意
肩掛けバッグやリュックは、毛玉の発生源のひとつ。
特にウールジャケットはストラップの縁で摩擦が起きやすく、片側だけ毛玉が集中することもあります。
着用後のブラッシング
ウールジャケットの場合、1分のブラッシングで毛玉発生率が大きく減少します。
- 毛流れが整う
- 静電気がたまりにくくなる
- ホコリが落ち、繊維同士の絡まりが抑制される
クリーニング後の保管方法に注意
ビニール袋は湿気がこもり、静電気も発生しやすいため長期保管には不向き。
- 一度風を通す
- 不織布カバーで保管
- 厚めで形が合ったハンガーを使用
生地・ジャケットの種類による毛玉の見え方の違い
スーツ用梳毛ウール
- 小さく細かい毛玉
- 光の角度によって白っぽくザラついて見える
カジュアルジャケット(ウール混・ニットジャケット)
- 大きめの毛玉
- 脇・袖・腰など摩擦の強い部位に集中
ポリエステル主体の生地
- 毛玉が硬く残りやすい
- 処理してもテカリが出やすいことがある
毛玉ができにくいジャケットを選ぶポイント
- 表面が滑らかで毛羽が少ない生地
- 高密度で、触れても毛が立ちにくい梳毛生地
- 混紡であっても、毛羽立ちの少ない糸を使ったもの
- 光沢が均一で、撚糸がしっかりした生地
「混紡=毛玉が出やすい」ではなく、繊維の組み合わせや糸の設計・織りの密度のほうが大きく影響します。
まとめ
- 毛玉は摩擦・静電気・繊維の性質が原因で生じる
- 短繊維や起毛感のある素材は特に毛玉ができやすい
- 正しく処理するなら電動毛玉取り+ブラシが最も安全
- テープやカミソリの乱用は生地ダメージの元
- ローテーション・ブラッシング・保管の工夫で予防可能
- 購入時は「梳毛・高密度・毛羽が少ない」生地を選ぶと毛玉に強い
以上、ジャケットの毛玉についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
