目次
シルエットと全体像
90年代のスーツは、バブル経済の影響を強く受けた前半と、不況下で軽快さを求める後半とで大きく変化しました。
- 前半(バブル余韻期)
肩幅が広く、肩パッドをしっかり入れた「力強いシルエット」が主流でした。ジャケットは大きめで、パンツはツータック入りのゆったりとした形が基本。裾は長めで、靴に生地がたまる「クッションパンツ」が一般的でした。 - 後半(カジュアル化期)
景気の後退とともに、徐々に肩パッドが薄くなり、自然なラインに移行。パンツもタックは残りつつも、少しずつシルエットが細くなり、動きやすさが重視され始めました。
色と素材
- 色
ネイビーやチャコールグレーが定番でしたが、ライトグレーやベージュといった明るめの色も人気。バブル崩壊直後には黒のダブルスーツも「できる男」「夜の街」の象徴として流行しました。 - 素材
ウールが基本ですが、光沢感のあるモヘア混やポリエステル混の生地も好まれました。特に前半は「リッチで目立つ」質感が好まれ、後半になると軽量で動きやすい生地が増えていきます。
ディテールの特徴
- ジャケット
前半はダブルブレスト(特に6ボタン)が大流行し、重厚感を演出。後半になるとシングルジャケットの人気が復活し、より実用的で軽快な印象へ。 - パンツ
前半はワンタック・ツータックで腰回りに余裕を持たせるのが基本。後半になるとやや細めのシルエットにシフトしましたが、完全なスリム化は2000年代半ば以降です。 - ネクタイ
太めで派手な柄が目立ち、幾何学模様やブランドロゴ入りが人気。アルマーニやエルメスのネクタイはステータスシンボルで、一部ではヴェルサーチの派手な柄も支持を集めました(ただし主に富裕層や夜の世界での人気)。
背景とファッションの流れ
- バブル余韻(前半)
高級ブランド志向が色濃く、アルマーニのダブルスーツやエルメスのネクタイで固めるのが「できる男」の象徴でした。 - 不況とカジュアル化(後半)
バブル崩壊後は高額ブランド志向が落ち着き、機能性・価格重視のスーツや、アメリカ発の「ビジネスカジュアル」が少しずつ浸透。ノーネクタイや軽量ジャケットの普及へとつながっていきます。
現代から見た90年代スーツ
現代のジャストサイズ中心のスーツと比べると、90年代のものは「大きすぎる」「野暮ったい」と見られることもあります。
しかし、近年はダブルジャケットやワイドパンツがリバイバルし、当時のスタイルが新鮮さを持って再評価されています。
以上、90年代に流行ったスーツについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。