ネクタイの着崩しとは、きっちりと締めたネクタイをあえて少しだけルーズに整え、自然体で余裕のある印象を演出する着こなし術のこと。
単なる“だらしなさ”ではなく、「清潔感を保ちながら洒脱に見せる」ための高度なスタイルです。
この記事では、ビジネスからカジュアルまで使える着崩しのコツと、失敗しないためのポイントを詳しく解説します。
ネクタイの着崩しとは?
定義と目的
ネクタイの着崩しとは、結び目や襟元をあえて完璧に整えず、自然なゆるさを出すことで「抜け感」を作るスタイルのことです。
堅すぎず、でもだらしなくない、そんな“こなれた雰囲気”を生むことが目的です。
着崩しの主な目的は以下の3つ。
- 堅苦しい印象を和らげる
- 大人の余裕やセンスを感じさせる
- カジュアルシーンに自然に馴染ませる
現代のオフィスカジュアルや休日スタイルにおいて、この「計算された緩さ」は重要な要素になっています。
基本の着崩しテクニック
結び目を少し緩める
最もベーシックな方法です。
ネクタイをしっかり結んだあと、第一ボタンを外し、結び目を1〜2cm下げるだけで、ぐっとリラックス感が出ます。
ただし、緩めすぎは禁物。首元のラインが自然に見える範囲で留めましょう。
清潔感を維持しつつ、退勤後や休憩時に最適。
ノット(結び目)をわずかに崩す
左右非対称な“ナチュラルなズレ”が出るように、ノットを軽く整える方法です。
おすすめはフォアインハンドノット。自然な非対称さが出やすく、イタリア的な「スプレッツァトゥーラ(計算された無造作)」の美学に通じます。
⚠ セミウィンザーやウィンザーは結び目が大きく対称的になりすぎるため、着崩しにはやや不向きです。
ディンプル(くぼみ)を調整する
ディンプルを浅めに入れると軽やかに、深めに入れると端正に見せられます。
完全に無くすと締まりのない印象になりやすいため、浅め〜中程度で立体感を残すのがベスト。
素材が柔らかいニットタイやウールタイなら、浅めでも自然な陰影が出やすいです。
シャツの襟元でニュアンスを出す
襟の形と開き具合でも印象は大きく変わります。
- プレーンカラーやセミワイドカラー:第一ボタンを外して軽く緩めると上品な抜け感に。
- ボタンダウンカラー:第一ボタンを外すと襟のロールが崩れやすいため、小さめノット+軽い空気感で整えるのがコツ。
シーン別の着崩し活用法
オフィスカジュアル
- 第一ボタンを外してノットを軽く下げる
- ニットタイやウールタイで柔らかい印象に
→ “仕事モードのままでも余裕を感じさせる”バランスに。
仕事終わりの食事・デート
- ネクタイを少しだけ下げて、襟元に空気感を
- ジャケットを羽織れば清潔感を保てる
→ 「きちんと感+リラックス感」で印象アップ。
休日のカジュアルスタイル
- デニムシャツやオックスフォードシャツに細めのニットタイ
- あえてディンプルなしで自然に
→ “頑張りすぎない大人カジュアル”を演出できます。
着崩しで失敗しないためのチェックポイント
- 清潔感を最優先に
シャツにシワや皮脂汚れがあると、一気に「だらしない印象」に。緩めるなら“清潔を前提”に。 - 剣先の位置をキープ
結び目を緩めても、大剣の先端はベルトの中心〜バックル付近にあるように。
ずれすぎると全体が間延びします。 - 小剣(裏側の細い方)の扱い
小剣を少し覗かせる「小剣出し」は伊達男的テクですが、日本のビジネスでは賛否あり。
オフシーン限定にするのが無難です。 - 素材で“緩さ”をコントロール
- シルク:艶やかで上品(フォーマル寄り)
- ニット/ウール:柔らかくカジュアル
- コットン:ナチュラルで軽快
素材の質感で印象を微調整しましょう。
スプレッツァトゥーラに学ぶ「計算された無造作」
イタリアのファッション哲学「スプレッツァトゥーラ(Sprezzatura)」は、“何もしていないように見えて、すべてが計算されている”という美意識を意味します。
ネクタイの着崩しもまさにこの考え方。
結び目のゆるさ、襟の空気感、素材の選び方、どれも「狙って崩す」ことで自然体の美しさが生まれます。
重要なのは「崩すこと」ではなく、「整えたうえで余白を作る」ことです。
着崩しのTPO(使いどころ)
| シーン | 着崩しの可否 | ポイント |
|---|---|---|
| 来客対応・会議・面接 | 不可 | きっちり結ぶのが基本 |
| 内勤・移動時 | 軽めにOK | 第一ボタンを外す程度 |
| 退勤後・食事・デート | 積極的に | 結び目を少し下げる |
| 休日・カジュアル | 自由に | 素材と色で遊ぶ |
TPOをわきまえたうえで着崩しを楽しむことが、「大人のセンス」です。
まとめ:上品な着崩しは「清潔感 × バランス × 素材感」
ネクタイの着崩しは、清潔感を保ち、バランスを崩しすぎず、素材感で雰囲気を出すことが成功の秘訣です。
- ✔ 第一ボタンを外して余裕を出す
- ✔ ノットを軽く崩して自然体に
- ✔ ディンプルと剣先のバランスをキープ
- ✔ TPOを意識して使い分ける
この4点を守れば、あなたのネクタイスタイルは「堅苦しさ」から「洗練された余裕」へと進化します。
以上、ネクタイの着崩しについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
