ワイシャツの“縫い目”は、ただのつなぎ目ではありません。
それはシャツの耐久性・快適さ・上品さを支える「設計構造」であり、職人技が凝縮された部分です。
縫い方や針の細かさひとつで、見た目の印象も寿命も変わります。
ここでは、ワイシャツの縫い目に関する基本構造から、品質の見分け方までを詳しく紹介します。
縫い目の役割と縫製精度の重要性
ワイシャツは複数の生地を縫い合わせて立体的に仕立てられています。
縫い目はその「骨格」を形成し、シャツの形状を支えるだけでなく、強度や肌ざわりを左右します。
高級シャツでは、縫い目が極めて細かく(一般的に3cmあたり18〜24針)、縫い合わせが滑らかで、内側もきれいに処理されています。
逆に、縫い目が粗く縫製が雑なシャツは、着心地や見た目に影響が出やすいのです。
縫い方の種類と特徴
巻き伏せ本縫い(フラットフェルシーム)
高級ワイシャツの象徴的な縫製方法です。
2枚の生地を重ねたあと、片側の縫い代を包み込むようにもう一度縫うことで、縫い代が完全に隠れ、裏側まで美しく仕上がります。
- 特徴:裏から見ても縫い目が整い、肌に縫い代が当たらないため着心地が良い。
- 使用箇所:脇線・袖下・ヨーク・アームホールなど強度が必要な部位。
- ポイント:手間と技術がかかるため、高級ドレスシャツに多い仕様。
ロック縫い(オーバーロック)
量産シャツやカジュアルシャツによく使われる縫製。
生地端をロックミシンでかがってほつれを防ぎ、簡潔に縫い合わせます。
- 特徴:生産性が高く、コストを抑えられる。
- デメリット:裏側に糸のかがりが出るため、肌ざわりがやや粗い。
- 使用箇所:主に見えない脇や袖下部分。
シングルステッチ(一本針縫い)
1本の直線ステッチで仕上げる方法。
ラインがシャープで、ドレス感が高く上品に見えます。
- 特徴:軽やかで洗練された印象。
- 強度:本数が少ないから弱いわけではなく、運針や糸の種類・縫製設計で十分な耐久性を確保可能。
- 使用箇所:襟・カフス・前立て・ヨークなど。
ダブルステッチ(二本針縫い)
2本のステッチを平行に走らせることで強度を高めた縫い方。
カジュアルラインやデニムシャツに多く、タフでスポーティな印象になります。
- 特徴:デザイン的にも力強く、視覚的に安定感がある。
- 使用箇所:アームホールやサイドシームなど負荷がかかる部位。
運針数(縫い目の細かさ)でわかる品質
縫い目の細かさを示す「運針数」は、品質を判断するうえで重要な基準です。
高級シャツほど運針が細かく、見た目も滑らかになります。
| 運針数(3cmあたり) | 品質の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 〜14針 | 粗め | カジュアルシャツ・低価格帯に多い |
| 16〜18針 | 標準的 | 一般的なビジネスシャツ |
| 19〜21針 | やや細かい | 国産上級シャツに多い運針数 |
| 21〜24針 | 高級仕様 | 細密で上品、滑らかな縫い目 |
| 24針以上 | 超高級 | ドレスシャツ・オーダー品クラス |
※高密度の縫いは針穴が目立たず、糸切れしにくく、美しい見た目です。
各部位ごとの縫いの特徴
| 部位 | 推奨縫製方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 肩ヨーク | シングルまたは巻き伏せ | 可動性とフィット感を両立 |
| アームホール | 巻き伏せまたはダブルステッチ | 強度が必要で縫製の精度が問われる |
| 脇・袖下 | 巻き伏せ本縫いまたはロック縫い | 肌に触れるため仕上がりで着心地が変化 |
| 襟・カフス | シングルステッチ | 繊細なステッチラインが上質感を演出 |
高品質シャツの見分け方
- 裏側の縫い目が美しい
→ 縫い代が隠れ、糸が均一に整っているか確認。 - 針目が細かく、間隔がそろっている
→ 運針が一定で直線的なら、ミシン精度と職人の腕が高い。 - アームホールや脇線が巻き伏せ縫いになっている
→ 高級シャツ特有の丁寧な構造。 - ボタンホールや襟のステッチが乱れていない
→ 細かい部分の精度は全体の品質を反映する。
縫い目がもたらす印象の違い
- 細かい運針・シングルステッチ → 上品でフォーマル。ドレスシャツに最適。
- 太めの糸・ダブルステッチ → カジュアルで堅牢。オフスタイルやワーク調に。
縫い目は、強度だけでなく「雰囲気」をつくるデザイン要素でもあります。
つまり、ワイシャツの印象は“生地+縫製”の組み合わせで完成するのです。
縫い目のメンテナンスと寿命
縫い目は洗濯やアイロンによる摩擦・熱で徐々に劣化します。
特にアームホールや袖の付け根など動きの多い箇所は、糸切れが起きやすい部位です。
糸がほつれた場合は放置せず、早めの補修がシャツの寿命を延ばします。
また、高温のアイロンや強い脱水は糸の伸縮を損なうため避けるのがベターです。
まとめ
ワイシャツの縫い目は、見えない部分にこそ品質が宿ります。
「巻き伏せ本縫い」「細かい運針」「均一なステッチ」これらがそろっているシャツほど、着心地も見た目も長持ちします。
ワイシャツを選ぶ際は、生地やデザインだけでなく、“縫いの美しさ”にも注目してみましょう。
それが、本当に上質な一着を見抜くためのポイントです。
以上、ワイシャツにある縫い目についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
