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ワイシャツが濡れると透ける理由について

ワイシャツが雨や汗で濡れると、下に着ている肌やインナーが透けて見えることがあります。

これは単なる「布が薄かった」わけではなく、光の反射や透過の仕組みが変化するために起こる現象です。

ここでは、繊維構造・光の屈折率・素材の違いなど、科学的な視点から詳しく解説します。

目次

乾いたワイシャツが白く見える理由

一般的なワイシャツは、綿やポリエステルなどの細い繊維を織り合わせた布でできています。

乾いた状態では、繊維と繊維の間に微細な空気の層が存在し、光が当たるとその空気層と繊維表面で光が乱反射します。

この「拡散反射」によって布は白く見え、内部の肌や下着は見えません。

つまり、白く見える=光があちこちに散って反射しているという状態です。

濡れると屈折率の差が小さくなる

ワイシャツが濡れると、この空気層が水で満たされます。

ここで重要なのが「屈折率(光が物質中をどれだけ曲げられるか)」の違いです。

物質屈折率
空気約 1.00
約 1.33
綿繊維(セルロース)約 1.53

乾いているときは「空気(1.00)」と「繊維(1.53)」の差が大きいため、光が強く乱反射します。

一方、濡れると「水(1.33)」が間に入り、屈折率の差が小さくなるため、光が繊維を通り抜けやすくなります

これにより、布全体が半透明化し、肌の色や下着の模様が透けて見えるようになります。

濡れた部分が暗く見える理由

濡れた布は単に透けるだけでなく、「濃く」見えることもあります。

これは、乱反射が減ることで光が内部に多く吸収されるためです。

つまり、反射が減って暗くなる一方で、透過が増える――この二つの現象が同時に起こります。

その結果、肌や下着の色がよりはっきりと透けて見えやすくなります。

繊維の変化と肌への密着

綿やレーヨンなどの繊維は水を吸うと膨張(膨潤)します。

これにより、織り目自体はむしろ詰まる傾向にありますが、繊維の間の空気はすべて水に置き換わるため、屈折率差の減少が支配的になります。

さらに、水分を含んだ布は柔らかくなり、肌に密着しやすくなるため、光が肌表面で反射して戻る量が増え、輪郭がより鮮明に見えてしまいます。

素材による透けやすさの違い

素材ごとに吸水性や表面特性が異なるため、濡れたときの透けやすさも変わります。

素材特徴濡れたときの透け傾向
綿(コットン)吸水性が高く、膨潤しやすい非常に透けやすい
ポリエステル吸水性が低く、撥水性があるやや透けにくい
ナイロン吸水しやすく、光沢が強い中程度〜やや透けやすい
レーヨン高吸水で柔らかくなる透けやすい

ただし、実際の透けやすさは生地の厚み・密度・織り方・色・仕上げによって大きく異なります。

たとえば同じ綿でも、高密度のブロード生地はガーゼよりはるかに透けにくいのです。

透けを防ぐための素材設計と加工技術

近年は、濡れても透けにくいワイシャツを実現するために、さまざまな技術が用いられています。

  • 防透加工:酸化チタン(TiO₂)などの白色顔料を繊維や糸に練り込み、光を強く散乱させる。
  • 高密度織り:繊維間のすき間を極限まで減らし、光の通過を抑制。
  • 撥水加工:水を弾いて繊維間に入り込ませず、屈折率差の変化を防ぐ。
  • 二重織りや裏地付き構造:表層と裏層で光を分散させ、肌とのコントラストを低減。
  • オフホワイトやベージュ系カラー:純白よりも肌色との明度差を抑え、透けを感じにくくする。

これらの工夫によって、機能性シャツは見た目の清潔感を保ちながら、透けにくさを実現しています。

まとめ ― 透けるのは光学的必然

ワイシャツが濡れて透けるのは、単に布が薄くなるからではなく、空気が水に置き換わることで屈折率差が減少し、光が通り抜けやすくなるためです。

乾いているときは「乱反射」によって白く不透明に見えますが、濡れると「透過」と「吸収」が増え、結果として肌色が透けて見える現象が生じます。

この透けは光学的な必然であり、素材や加工の工夫でどこまで制御できるかが、現代の繊維技術の腕の見せどころなのです。

以上、ワイシャツが濡れると透ける理由についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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