「ラペル(lapel)」は、スーツの印象を大きく左右する重要なディテールであり、デザインや幅、形によってフォーマル度や着用者の雰囲気が変わります。
ここでは意味・種類・歴史・選び方・TPO別の活用まで、プロの目線で詳しく解説します。
目次
ラペルとは?
ラペルとは、スーツやジャケットの前身頃の襟部分のうち、折り返された部分を指します。
もともとは19世紀初頭の男性用外套の前合わせを折り返した名残で、現在は装飾的かつ機能的な要素になっています。
- 上襟(カラー:collar) … 首回りに沿う部分
- ラペル(lapel) … 折り返し部分
- ゴージ(gorge) … 上襟とラペルが交わる角度や位置
つまり、襟のうち「下の広い部分」がラペルということです。
ラペルの主な種類
ラペルには大きく3つの形があります。形状はフォーマル度や雰囲気に直結します。
種類 | 特徴 | フォーマル度 | よく使われる場面 |
---|---|---|---|
ノッチドラペル (Notch Lapel) | 上襟とラペルの間に切れ込み(ノッチ)が入っている | 中程度(汎用性高い) | ビジネススーツ、日常的なジャケット |
ピークドラペル (Peak Lapel) | ラペルの先端が上向きに尖っている | 高い(華やか) | タキシード、フォーマルスーツ、ダブルブレスト |
ショールカラー (Shawl Collar) | 切れ込みがなく丸みを帯びた一続きのライン | 高い(柔らかく上品) | タキシード、ディナージャケット |
補足
- シングルスーツではノッチドラペルが基本。
- ダブルスーツやフォーマルウェアではピークドラペルが多い。
- ショールカラーは主にイブニング用。
ラペル幅と印象の違い
ラペルの「幅」はスーツ全体のバランスと時代感に直結します。
- ナローラペル(狭い):モダン・シャープ・若々しい印象(幅6〜7cm)
- スタンダード幅:バランスが良く万人向け(幅7.5〜8.5cm)
- ワイドラペル(広い):クラシック・重厚・存在感あり(幅9〜10cm以上)
トレンドとして、2010年代前半はナローが流行しましたが、近年はややワイド寄りのクラシック回帰傾向があります。
ゴージライン(Gorge line)の位置
ラペルの上端(ゴージ)の高さも印象を左右します。
- 高めのゴージ:シャープで現代的な印象
- 低めのゴージ:クラシックで落ち着いた印象
近年のイタリアスーツはやや高め、日本のビジネススーツは中庸が多いです。
ラペルの歴史的背景(簡潔)
- 19世紀初頭:外套の襟を折り返して胸元を開けたスタイルから派生
- 19世紀末:スーツが日常着化し、ラペルの形が定着
- 20世紀:時代ごとに幅や形が変化(戦後は細く、70年代は太く、80年代もワイド化、90年代ナロー化)
選び方のポイント(TPO別)
- ビジネス用 → ノッチドラペル、幅は7.5〜8.5cmで無難
- フォーマル用 → ピークドラペル(華やかさ重視)、またはショールカラー
- カジュアル用 → 細めのノッチドラペルやパッチポケットと合わせる
まとめ
ラペルは「スーツの顔」の一部であり、形・幅・高さの3つが印象を決めます。
同じスーツでもラペルが変わるだけで「現代的にもクラシックにも、ビジネスにもフォーマルにも」変化させられるため、購入時やオーダー時には必ず注目すべきディテールです。
以上、スーツのラペルについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。