スーツとベスト(ジレ/ウエストコート)の色が違っても、まったく問題ありません。むしろ上手に差を付けると、立体感・きちんと感・季節感が出て「仕事ができる」印象になります。
一方で、ビジネスの保守的な場面や冠婚葬祭では「共生地(スーツと同じ生地・同色)」もしくは色差の薄い組み合わせが基本。
強いコントラストや光沢、派手柄はTPOによりNGになり得ます。
以下、プロの着こなし基準で詳しく解説します。
目次
場面別の“OKライン”
ビジネス(オフィス/取引先訪問/登壇)
- 保守的な業種(金融・法務・行政・製造の本社など)
無地ネイビーorチャコールのスーツに、中~濃グレーのベストが鉄板。差は明度1段階(近い濃さ)に留めると安心。
例)ネイビースーツ × チャコールグレーベスト/チャコールスーツ × ダークグレーベスト - クリエイティブ・IT・広告など
コントラストをもう一段上げてもOK。ネイビー × ライトグレー、ブラウン × ベージュ、細かい柄(グレンチェック)ベスト等も許容されやすい。
商談の“勝負どき”
- ネイビーのスリーピースを基軸に、光沢控えめのミディアムグレー・ベストで胸元を引き締める。
- 強すぎる配色(ネイビー × クリーム)や強光沢は避け、素材の格(ウール100/梳毛)を合わせる。
結婚式(ゲスト)
- ブラック/ネイビーのスーツ × シルバー~ライトグレーのベストが最安全。
- 白・アイボリーのベストは新郎級に見えやすいためゲストは避けるのが無難。
- 黒スーツに黒ベストは喪服連想のリスク。黒スーツならライト~ミディアムグレーで明度差を作る。
弔事(葬儀)
- 基本は2ピース(ベスト無し)。寒さ対策で着るなら無地の黒(光沢無し)のみ可。柄・色差・光沢はNG。
面接
- 2ピースが無難。どうしても着るなら共生地の3ピース、色差は付けない。
失敗しない「色・素材・柄」ルール
- 色は“色相×明度×彩度”で考える
- 色相:ネイビー×グレーのように「寒色+無彩色」は馴染みやすい。
- 明度:差が1~2段階以内だとドレス寄り(フォーマル寄り)、3段階以上でカジュアル寄り。
- 彩度:ビジネスは低~中彩度。高彩度(青み強いロイヤルブルー等)は避ける。
- コントラストは場面に合わせて
- 保守的:低~中コントラスト(ネイビー×チャコール、チャコール×ダークグレー)。
- 自由度高め:中コントラスト(ネイビー×ライトグレー、ブラウン×ベージュ)。
- 素材の格を合わせる(最重要)
- スーツ:梳毛ウール(スムース)なら、ベストも梳毛ウール。
- 秋冬の起毛(フランネル/ツイード)のスーツに光沢サテンのベストはちぐはぐ。→起毛×起毛、サラッ×サラッで合わせる。
- 柄は“スケール”をずらす
- スーツが無地 → ベストは細かいグレンチェック可。
- スーツにストライプ → ベストは無地。柄×柄は上級者向け。
- Vゾーンの“面積バランス”
- ベストのVが深いほどタイが主役・シャープな印象。浅いほど落ち着き・クラシック。
- 最後のボタンは外す(英国式の基本)。
スーツ色別「色違いベスト」ベストプラクティス
- ネイビー(最も汎用)
- ミディアム~ダークグレー(安全・知的)
- ライトグレー(少し華やか/結婚式ゲスト向き)
- 濃紺(同系色で奥行き)
- チャコールグレー
- ダークグレー(ごく控えめ)
- ミディアムグレー(適度な陰影)
- ネイビー(スマートだがコントラスト控えめに)
- ライトグレー
- チャコールグレー(締まる)
- ネイビー(爽やか・春夏)
- ブラック(日本の式典・ゲスト用途で多い)
- ライト~ミディアムグレー(慶事向け)
- ※黒×黒は弔事連想。光沢・柄は避ける。
- ブラウン
- ベージュ/オートミール(柔らか・上品)
- ダークブラウン(渋めモード)
- ベージュ/サンド
- ブラウン(秋口の季節感)
- ライトグレー(都会的・夏向き)
季節と生地選びの指針
- 春夏:トロピカルウール/強撚ウール/メッシュ。色差は軽く、ライトグレー/ベージュ系が爽やか。
- 秋冬:フランネル/ツイード/ヘリンボーン。起毛感をベストにも繋ぐと一体感。
- 光沢:サテンやモヘア調の強光沢は慶事・夜に寄る。日中のビジネスでは控えめに。
日本の慣習で気を付けること
- ビジネスの基本は共生地3ピース or 2ピース。色違いベストは「お洒落の範囲」だが、初対面の取引先・保守業界では控えめに。
- 結婚式ゲスト:黒や濃紺のスーツにシルバー/ライトグレーのベスト&タイが最安全。白系ベストは新郎感が出るので避ける。
- 葬儀:ベスト無しが原則。どうしても着用時は無地マット黒のみ。
よくあるNG・やりがちミス
- 素材ミスマッチ:ツイードのスーツにテカテカのベスト。
- 過剰コントラスト:ネイビーにクリームや真っ白(ビジネスでは浮く/式典は新郎感)。
- 派手柄×派手柄:ストライプ×チェック×派手タイの“三重奏”。
- 丈・サイズ不良:ベストの裾がベルトを隠していない(シャツが覗く)、アームホールが大きすぎて脇からシャツが見える。
- 最下ボタンを留める:基本的に外すのが礼儀。
体型補整のコツ(プロ目線)
- 身長を高く・ウエストを細く見せたい
→ ベストはVが深め・ボタン位置やや高め、タイ幅は中~ナロー、スーツは無地~細ストライプ。 - 胸板はあるがお腹周りが気になる
→ 中~濃色ベストで腹部を引き締め、腰ポケット位置がやや高めのデザインで脚長効果。 - 肩幅が華奢
→ ラペル付きベスト(ショール/ノッチ)で上半身に骨格感を足す。
小物との連動
- ベルトよりサスペンダーがベストとは好相性(ウエスト部がもたつかず、前身頃がフラット)。
- 靴・ベルトの色はスーツに合わせるのが基本。ベストの色で合わせる必要はない。
- ポケットウォッチやチェーンは式典や古典的ドレスアップ向け。ビジネスでは控えめに。
迷ったらこの3択(業界問わず“安全・速い・外さない”)
- ネイビースーツ × ミディアムグレーベスト × ネイビー系タイ
- チャコールスーツ × ダークグレーベスト × ボルドーorダークネイビータイ
- (結婚式ゲスト)黒スーツ × ライトグレーベスト × シルバータイ
まとめ
- 色違いベストはおかしくない。むしろ「明度差は控えめ」「素材の格を揃える」「柄は一つ」の3原則を守れば、上質で信頼感のある装いになります。
- ビジネス保守寄り/初対面/式典ではコントラストを抑え、ネイビー×グレーをベースに。
- 自由度が高い日はベージュやチェックで季節感や個性をプラス。
以上、スーツとベストの色違いはおかしいのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。