仮縫いとしつけは、どちらも本縫いの前に行う一時的な縫い作業です。
そのため、初心者の方には少し混同されやすい言葉です。
ただし、厳密には目的が異なります。
仮縫いは、服や作品の形・サイズ・シルエットを確認するための工程です。
一方、しつけは、本縫いの前に布がずれないように仮固定するための作業です。
つまり、仮縫いは「確認・補正」のため、しつけは「固定・作業補助」のために行うものと考えると分かりやすいでしょう。
仮縫いとは
仮縫いとは、本縫いをする前に布を一時的に縫い合わせ、仕上がりの形やサイズを確認する作業です。
特に洋服作りでは、裁断した布をざっくり縫い合わせ、実際に着用して体に合っているかを確認します。
肩幅、身幅、ウエスト、丈、袖の位置、シルエットなどを見ながら、必要に応じて補正を行います。
オーダーメイドの服で「仮縫いをする」と言う場合も、完成前の状態で一度着てもらい、体に合わせて調整する工程を指します。
仮縫いは、完成後に直すと大変な部分を本縫い前に確認できるため、仕上がりの失敗を防ぐ重要な工程です。
しつけとは
しつけとは、本縫いの前に布がずれないように、しつけ糸などで一時的に縫い留める作業です。
ミシンで縫う前や、手縫いで仕上げる前に、布同士の位置や折り目を安定させるために行います。
裾上げ、ファスナー付け、ポケット付け、衿付け、袖付け、裏地付けなど、さまざまな場面で使われます。
まち針だけでも布を留めることはできますが、長い距離を縫う場合や、薄い生地・滑りやすい生地・厚みのある生地では、まち針だけだとずれてしまうことがあります。
そのようなときにしつけをしておくと、本縫いが安定し、仕上がりもきれいになります。
洋裁では、本縫いが終わったあとにしつけ糸を抜くことが一般的です。
ただし、和裁や一部の仕立てでは、あえて残すしつけもあります。
仮縫いとしつけの主な違い
仮縫いとしつけは、どちらも「あとでほどくことを前提にした一時的な縫い」ですが、目的と使い方が異なります。
仮縫いは、服や作品の完成形を確認するために行います。
しつけは、布を動かさずに本縫いしやすくするために行います。
目的の違い
仮縫いの目的は、サイズや形を確認することです。
たとえば、ワンピースを作る場合、布を仮に縫い合わせて実際に着てみます。
その状態で、肩幅が合っているか、ウエストがきつくないか、丈が長すぎないか、シルエットがきれいに出ているかを確認します。
一方、しつけの目的は、布を固定することです。
本縫いの途中で布がずれたり、折り目が開いたりしないように、あらかじめ粗い針目で縫い留めておきます。
完成形を確認するというより、きれいに縫うための下準備として行う作業です。
使う場面の違い
仮縫いは、主に洋服の試着や補正を行う場面で使われます。
ジャケット、ワンピース、スカート、パンツ、コートなど、体に合わせて仕立てる服では、仮縫いによってサイズ感や着心地を確認します。
特に、高価な生地を使う場合や、初めて使う型紙で作る場合は、仮縫いをしておくと安心です。
しつけは、より幅広い縫製作業で使われます。
裾、衿、袖、ファスナー、ポケット、タック、ギャザー、裏地など、布がずれやすい部分や、正確に縫いたい部分に使います。
小物作りやバッグ作りでも、本縫い前の仮固定としてしつけを行うことがあります。
作業の意味合いの違い
仮縫いは、作品全体の確認や補正を目的とした「工程」です。
一方、しつけは、布を一時的に留める「技法」や「作業」です。
そのため、仮縫いとしつけは完全に別々のものではありません。
仮縫いをするときに、しつけ縫いのような粗い縫い方を使うこともあります。
つまり、仮縫いという工程の中で、しつけを使うことがあると考えると、両者の関係が分かりやすくなります。
仮縫いが必要な場面
仮縫いは、仕上がりのサイズや形を本縫い前に確認したいときに行います。
特に、体に合わせて作る洋服では重要です。
型紙通りに作っても、体型や姿勢、好みのゆとりによって、実際の着心地が変わるためです。
洋服のサイズを確認したいとき
仮縫いは、洋服のサイズ確認に役立ちます。
たとえば、肩幅、胸まわり、ウエスト、ヒップ、袖丈、着丈などは、型紙上では合っているように見えても、実際に着ると違和感が出ることがあります。
本縫い前に仮縫いをしておけば、きつい部分を広げたり、余りすぎている部分を詰めたりできます。
完成してから大きく直すよりも、手間や失敗を減らせます。
シルエットを確認したいとき
仮縫いは、服のシルエットを確認するためにも行います。
同じサイズでも、体に沿うデザインなのか、ゆったり着るデザインなのかによって、仕上がりの印象は大きく変わります。
仮縫いをしておくと、着たときのラインやバランスを確認できます。
スカートの広がり方、パンツの太さ、ワンピースのウエスト位置、ジャケットの肩の落ち方などは、実際に形にしてみないと分かりにくい部分です。
高価な生地を使うとき
高価な生地や扱いにくい生地を使う場合も、仮縫いをしておくと安心です。
いきなり本番の生地で縫ってしまうと、サイズが合わなかったときに修正が難しくなります。
特に、ウール、シルク、レース、フォーマル生地などは、縫い直しの跡が残りやすい場合があります。
そのため、本番前に別布で仮縫いをしたり、しつけ糸で大まかに組み立てたりして、仕上がりを確認することがあります。
しつけが必要な場面
しつけは、本縫いをきれいに進めたいときに役立つ作業です。
まち針だけで固定するよりも布が安定しやすく、縫いずれや歪みを防ぎやすくなります。
初心者ほど、しつけを丁寧に行うことで仕上がりの失敗を減らせます。
ファスナーを付けるとき
ファスナー付けでは、しつけがよく使われます。
ファスナーは左右の位置がずれると、開閉しにくくなったり、見た目が歪んだりします。
特に、コンシールファスナーやスカート・ワンピースの後ろ中心に付けるファスナーは、位置合わせが大切です。
しつけで仮固定してから本縫いすると、ファスナーがずれにくく、きれいに仕上がります。
裾上げをするとき
裾上げでも、しつけは便利です。
裾の折り上げ幅を決めたあと、アイロンで整え、しつけをしておくと、折り目がずれにくくなります。
特に、スカートやワイドパンツのように裾まわりが長いものは、まち針だけでは途中でずれやすいため、しつけをしておくと安定します。
手縫いでまつる場合も、ミシンで縫う場合も、しつけをしておくことで作業しやすくなります。
衿や袖を付けるとき
衿や袖は、曲線が多く、布がずれやすい部分です。
袖付けでは、袖山と身頃のカーブを合わせながら縫う必要があります。
衿付けでも、左右の形や位置がずれると目立ちやすくなります。
そのため、しつけで布を落ち着かせてから本縫いすると、縫いずれを防ぎやすくなります。
滑りやすい生地を縫うとき
サテン、シルク、裏地、薄手のポリエステルなど、滑りやすい生地を縫うときもしつけが役立ちます。
これらの生地は、まち針だけで固定してもミシンの送りでずれやすいことがあります。
しつけをしておくことで、布同士が安定し、縫い目の歪みを防ぎやすくなります。
しつけ糸とは
しつけには、一般的に「しつけ糸」と呼ばれる糸を使います。
しつけ糸は、本縫い用の糸とは違い、あとで取り除きやすいように作られています。
普通の縫い糸よりも撚りが甘く、やわらかいのが特徴です。
しつけ糸の特徴
しつけ糸は、布を一時的に留めるための糸です。
本縫いのように強度を出す必要はありません。
むしろ、作業後に抜き取りやすいことが重要です。
しつけ糸は撚りが甘いため、布に強く食い込みにくく、あとから外しやすいという特徴があります。
強く引っ張ると切れやすい場合もありますが、「切れやすい糸」というよりは、一時的な固定に向いた、抜き取りやすい糸と考えるとよいでしょう。
普通の糸で代用できるか
しつけ糸がない場合は、普通の手縫い糸で代用することもできます。
ただし、普通の糸はしつけ糸よりも丈夫で抜きにくい場合があります。
細かく縫いすぎると、あとで取り除くときに手間がかかったり、布を傷めたりすることもあります。
そのため、しつけをする場合は、針目を粗くし、必要以上に強く縫い締めないことが大切です。
しつけ縫いの種類
しつけにはいくつかの種類があります。
名称や分類は、洋裁・和裁・教材・教室によって多少異なる場合がありますが、基本的には「布を仮に固定する」「折り目を押さえる」「印を付ける」といった目的で使われます。
平しつけ
平しつけは、布を重ねた状態でずれないように、粗い針目でまっすぐ縫う方法です。
もっとも基本的なしつけで、裾、脇線、肩線、ファスナー部分など、幅広い場面で使われます。
本縫いの邪魔にならないように、本縫い線の少し外側や縫い代側にしつけをかけることもあります。
あとで糸を抜きやすくするため、針目は細かくしすぎないようにします。
斜めしつけ
斜めしつけは、斜め方向に針を入れて布を押さえるしつけです。
折り代や縫い代を落ち着かせたいとき、厚みのある部分を安定させたいときに使われます。
裾や見返しなど、布が浮きやすい部分に使うと、形を保ちやすくなります。
切りじつけ
切りじつけは、布を固定するためというより、型紙の印を布に移すためのしつけです。
ダーツ位置、ポケット位置、合印などを糸で印付けする方法で、あとから布を開いたときに、左右や表裏に同じ印を残すことができます。
しつけ糸を使う作業ではありますが、役割としては「固定」よりも「印付け」に近いものです。
仮縫いとしつけの関係
仮縫いとしつけは、目的を分けて考えると理解しやすいですが、実際の作業では重なる部分もあります。
仮縫いでは、しつけ糸で布を粗く縫い合わせることがあります。
つまり、仮縫いの作業の中で、しつけ縫いが使われることがあります。
仮縫いは工程、しつけは技法
仮縫いは、服や作品を本縫い前に組み立てて確認する「工程」です。
一方、しつけは、布を一時的に留めるための「技法」や「作業」です。
たとえば、ワンピースを作る場合、身頃やスカートを仮に縫い合わせて試着する作業が仮縫いです。
その仮縫いのために、しつけ糸で粗く縫うことがあります。
このように、仮縫いとしつけは対立する言葉ではなく、目的と役割が異なる言葉です。
「仮縫い=しつけ」ではない
仮縫いの中でしつけを使うことはありますが、仮縫いとしつけが完全に同じ意味というわけではありません。
仮縫いは、試着や補正を目的にしています。
しつけは、布を固定して本縫いしやすくすることを目的にしています。
そのため、同じように粗く縫っていても、何のために縫っているのかによって、仮縫いと呼ぶか、しつけと呼ぶかが変わります。
初心者はどちらを重視すべきか
初心者の場合、まずはしつけを丁寧に行うことをおすすめします。
仮縫いは、服作りやサイズ調整を本格的に行うときに重要になります。
一方、しつけは、裾上げや小物作り、ファスナー付けなど、日常的な裁縫でも役立ちます。
まずはしつけを覚えると失敗が減る
初心者がいきなりミシンで本縫いをすると、布がずれたり、縫い目が曲がったりしやすくなります。
まち針だけで不安なときは、しつけをしてから縫うと安定します。
少し手間はかかりますが、縫い直しが減るため、結果的にきれいに早く仕上がることもあります。
特に、ファスナー、裾、衿、袖、カーブ部分、滑りやすい生地では、しつけを省略しないほうが安心です。
服作りでは仮縫いも重要
自分の体に合う服を作りたい場合は、仮縫いも重要です。
型紙通りに作っても、必ずしも自分の体にぴったり合うとは限りません。
仮縫いをして試着すれば、本縫い前にサイズやシルエットを調整できます。
特に、ジャケット、コート、ワンピース、パンツなど、体へのフィット感が仕上がりに影響する服では、仮縫いを行う価値があります。
仮縫いとしつけの違いのまとめ
仮縫いとしつけは、どちらも本縫い前に行う一時的な縫い作業です。
ただし、目的が異なります。
仮縫いは、服や作品のサイズ、形、シルエット、着心地を確認するための工程です。
試着して補正するために行うことが多く、完成後の失敗を防ぐ役割があります。
しつけは、本縫いの前に布がずれないように固定するための作業です。
裾、ファスナー、袖、衿、ポケットなどをきれいに縫うための下準備として使われます。
覚え方
仮縫いとしつけの違いは、次のように覚えると分かりやすいです。
仮縫いは、仕上がりを確認するための一時縫い。
しつけは、本縫いしやすくするための一時固定。
また、仮縫いの中でしつけを使うこともあります。
そのため、両者は完全に切り離されたものではなく、目的によって呼び方が変わると考えるとよいでしょう。
以上、仮縫いとしつけの違いについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。







