スーツの股下は、パンツの見た目やバランスを大きく左右する重要な寸法です。
ただし、スーツの場合は単に長さを測るだけでは不十分で、実際に履いたときに裾がどう見えるかまで含めて考えることが大切です。
ここでは、スーツの股下の基本的な意味から、正しい測り方、裾上げで失敗しにくい考え方まで詳しく解説します。
股下とは何か
股下とは、パンツの股の縫い目の交点から裾まで、内側の縫い目に沿って測った長さのことです。
スラックスやスーツのパンツでは、この股下寸法をもとに裾上げの目安を考えます。
ただし注意したいのは、股下の数値と、実際にきれいに見える裾丈は必ずしも同じ意味ではないという点です。
同じ股下寸法でも、次のような条件によって見え方は変わります。
- パンツの股上の深さ
- 裾幅
- シルエットの細さや太さ
- 生地の落ち感
- 裾の仕様がシングルかダブルか
- 合わせる靴の形やボリューム
- 実際に穿くウエスト位置
そのため、スーツでは股下を測ることと裾丈を決めることを分けて考える必要があります。
スーツの裾丈は「数字」だけで決めないのが基本
スーツの裾上げでは、単純に「股下何cmにするか」だけで決めるよりも、試着した状態で靴に対して裾がどう落ちるかを確認しながら調整するのが基本です。
つまり、
- 股下は寸法として測るもの
- 裾丈は見え方として決めるもの
と考えると分かりやすいです。
特にスーツは、カジュアルパンツよりも裾の見た目が印象を左右しやすいため、最終的には靴を履いた状態でのバランス確認が欠かせません。
股下の測り方
もっとも失敗しにくい方法
一番おすすめなのは、今ちょうどよく履けているスラックスを平置きして測る方法です。
体を直接測ることもできますが、パンツごとの股上や穿く位置の違いがあるため、人体の股下寸法と仕上がり寸法は一致しないことが少なくありません。
そのため、実用面では手持ちのちょうどよいパンツを基準にする方法がもっとも確実です。
方法1:手持ちのスラックスを平置きで測る
用意するもの
- メジャー
- 平らな床やテーブル
- 基準にしたいスラックス
手順
スラックスを平らに置く
しわを軽く整え、左右の脚がねじれないように自然な形で置きます。
股の縫い目の交点を確認する
前身頃と後身頃の縫い目が交わる、股の十字部分を確認します。
ここが股下の起点です。
内股の縫い目に沿って裾まで測る
股の交点から、内側の縫い目に沿って裾の端までメジャーを当てて測ります。
この長さが股下です。
測るときの注意点
- 斜めに測らない
- 外側の縫い目で測らない
- 生地を強く引っ張らない
- できるだけ自然な状態で測る
手持ちの股下寸法は「基準値」として考える
ちょうどよいスラックスの股下がたとえば73cmだった場合、その数字は次のパンツ選びでも有力な参考になります。
ただし、別のパンツでも必ず73cmが正解とは限りません。
その理由は、同じ73cmでも以下の違いで見え方が変わるためです。
- 股上が深いか浅いか
- テーパードが強いかどうか
- 裾幅が細いか広いか
- 生地にハリがあるか、柔らかく落ちるか
- シングル仕上げかダブル仕上げか
つまり、手持ちのパンツで測った股下はかなり参考になる数字ですが、最終的には試着時の見え方で微調整する必要があります。
方法2:体を直接測る方法は参考程度に考える
自分の体にメジャーを当てて股下を測る方法もありますが、スーツの裾上げを正確に決める方法としてはあまりおすすめできません。
なぜなら、人体の股下寸法と、パンツとしてちょうどよく見える股下寸法は一致しにくいからです。
理由としては、次のような点があります。
- パンツごとに股上が違う
- ウエスト位置のわずかな違いで見え方が変わる
- 太ももや膝まわりのゆとりで落ち方が変わる
- シルエットによって裾の位置の見え方が変わる
そのため、体を直接測る方法はあくまで目安を知るための参考値として使い、実際の裾丈はパンツを履いて確認するのが基本です。
裾丈を決めるときに重要な「クッション」とは
スーツの裾丈を考えるときによく使われるのが、クッションという考え方です。
クッションとは、裾が靴の甲に当たって生じるたるみのことです。
このクッションの量によって、見た目の印象が変わります。
ノークッション
裾が靴の甲に強く当たって折れず、たるみがほとんど出ない長さです。
軽く触れる程度や、ほぼ触れない程度まで含めてノークッションと呼ばれることがあります。
特徴
- すっきり見える
- 現代的でシャープな印象
- 細身のシルエットと相性がよい
- 短くしすぎると軽く見えすぎることがある
ハーフクッション
靴の甲に軽く触れ、わずかにたるみが出る長さです。
ビジネススーツではもっともバランスが取りやすい長さとされています。
特徴
- 上品で自然な印象
- 短すぎず長すぎず、失敗しにくい
- ビジネス用途に向いている
- 初めてのスーツにも取り入れやすい
ワンクッション
裾が靴の甲に当たり、はっきりと1つ折れが出る長さです。
特徴
- ややクラシックな印象
- 落ち着きがある
- 太めのシルエットとも合わせやすい
- 長すぎると裾がもたついて見えることがある
迷ったときはハーフクッションが無難
一般的なビジネススーツで迷った場合は、ハーフクッション前後を基準にすると失敗しにくいです。
短すぎると軽く見えたり、座ったときに靴下やすねが目立ちやすくなったりします。
逆に長すぎると、裾が靴の上でもたついて野暮ったく見えることがあります。
その中間にあたるハーフクッションは、もっともバランスを取りやすい長さです。
裾丈を見るときのチェックポイント
裾丈を決めるときは、正面だけでなく横と後ろも確認することが大切です。
正面
靴の甲に対して、どれくらい裾が触れているかを確認します。
横
前だけ短すぎたり、後ろだけ長すぎたりしていないかを見ます。
後ろ
裾が床に触れず、かかと側で生地が過度に溜まっていないかを確認します。
後ろだけ長くなっていると、裾が擦れて傷みやすくなるため注意が必要です。
裾上げで失敗しやすいポイント
靴を履かずに決める
裾丈は靴との関係で決まるため、裸足や室内履きで判断すると誤差が出やすくなります。
今の流行だけで短くしすぎる
見た目はすっきりしても、ビジネスでは軽く見えすぎることがあります。
また、座ったときに脚が見えすぎる原因にもなります。
手持ちの股下寸法だけで決めてしまう
参考値としては有効ですが、別のモデルでも同じ見え方になるとは限りません。
正面だけ見て決める
正面はきれいでも、後ろで裾が溜まっていることがあります。
必ず全方向から確認した方が安心です。
シングルとダブルで見え方は変わる
シングル仕上げ
裾を折り返さない、もっとも標準的な仕上げです。
特徴
- すっきり見える
- ビジネス向き
- 迷ったときに選びやすい
ダブル仕上げ
裾を折り返して仕上げる方法です。
特徴
- 裾に重みが出る
- ややクラシックで洒落た印象になる
- 短すぎるとバランスが取りにくいことがある
ただし、ダブルだから必ず長めにするべきというわけではありません。
パンツの太さや全体のシルエットによって、ちょうどよい長さは変わります。
店で伝えるときの言い方
裾上げを依頼するときは、単に「股下○cmでお願いします」と伝えるだけでなく、どんな見え方にしたいかも添えると失敗しにくくなります。
たとえば次のような伝え方が分かりやすいです。
- ハーフクッションくらいでお願いします
- 靴の甲に軽く当たるくらいでお願いします
- 今履いているこのスラックスと近い見え方でお願いします
基準にしたいスラックスがある場合は、それを持参するとさらに伝わりやすくなります。
結論
スーツの股下は、股の縫い目の交点から裾まで、内股の縫い目に沿って測る寸法です。
ただし、スーツの裾上げではその数字だけで決めるのではなく、実際にパンツを履いて靴を合わせたときの見え方で最終調整するのが基本です。
もっとも失敗しにくいのは、今ちょうどよいスラックスの股下を参考にしながら、試着してクッションの出方を確認する方法です。
一般的なビジネス用途なら、ハーフクッション前後を基準にするとバランスよく仕上がりやすいでしょう。
以上、スーツの股下の測り方についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










