ジャケットやコートの後ろ裾に入れられた“スリット”のことで、動作性とデザイン性の両面で重要な役割を持つディテールです。
立つ・歩く・座るといった日常の動きを妨げないための構造でありながら、後ろ姿の印象を大きく左右する要素でもあります。
ベントがあることで、
- 生地がつっぱりにくくなる
- シルエットが乱れにくくなる
- 体の動きに合わせて裾が自然に開閉する
といったメリットが生まれ、ジャケット本来の美しいラインを損なわずに着用できるようになります。
ベントには大きく3種類があり、それぞれが異なる表情と機能を持っています。
センターベント
後ろ中心に1本スリットを入れた、最も一般的なベント仕様です。
もともとは乗馬用ジャケットの動きやすさを高める目的で誕生したと言われ、現代のスーツではアメリカ型のベーシックなビジネススーツを象徴するディテールとして定着しています。
特徴と印象
- オーソドックスでクセがなく、あらゆる場面に馴染みやすい
- 自然で控えめな後ろ姿をつくる
- “王道のビジネススーツ”という印象を与えやすい
メリット
- 汎用性が高く、ビジネスシーンの安心感がある
- スリット位置が中央のため、シンプルかつスッキリしたシルエットになる
注意点
タイトなジャケットの場合、動作によってスリットが開きやすく、お尻のラインが見えやすくなることがあるため、サイズ選びが重要です。
サイドベント
後ろ左右に2本スリットを入れた仕様で、英国スーツやイタリアンクラシコのテーラードスタイルで特に好まれるベントです。
動作時に生地が左右へ自然に逃げるため、後ろ姿の美しさと動きやすさのバランスに優れています。
特徴と印象
- 後ろ姿が立体的になり、よりエレガント
- ヨーロッパ的な品格を感じさせるデザイン
- 行動時でも裾がバタつかず、シルエットが崩れにくい
メリット
- 座った際に裾が左右に分散するため、シワになりにくい
- お尻が露出しにくく、スタイルを上品に見せられる
- 動きやすさと見た目の美しさの両方に優れる
注意点
- 仕立てが複雑なため、縫製の質が露骨に表れる
- 品質の低いジャケットだとベントが不自然に広がることもある
ノーベント
後ろにスリットを設けない仕様で、最もフォーマルなジャケットに多く採用されます。
特にタキシードや礼装用ジャケットでは“無駄のない後ろ姿”が求められるため、ノーベントが基本になります。
特徴と印象
- 後ろ姿が最もクリーンでミニマル
- ドレッシーで格調高い雰囲気を演出
- シルエットを一枚布で見せられるため、ラインが美しく出る
メリット
- とにかく後ろ姿が上品でフォーマル
- タイトシルエットのデザインに向いている
注意点
- 生地が逃げ場を失うため、動きやすさでは最も劣る
- 座った際に裾が引きつれやすいため、日常的なビジネスには実用性が低め
用途別に見るベントの選び方
ビジネス用途
センターベントかサイドベントが最適。
- センターベント=クセのない万能タイプ
- サイドベント=エレガントで立体的な後ろ姿
特に、デスクワークや座る時間が長い人にはサイドベントが快適です。
体型が気になる場合
腰まわり・お尻のラインを目立たせたくないなら、サイドベントが最も安心感がある仕様です。
フォーマルシーン
結婚式・式典など格式が求められる場では、ノーベントが定番。
後ろ姿の“乱れ”を排除できるのが大きな魅力です。
まとめ
ベントは、ただのデザインではなく「動きやすさ」「シルエット」「後ろ姿の印象」を司る重要な構造です。
- センターベント:最もベーシックでビジネス向き
- サイドベント:英国・イタリア由来のエレガンスと実用性を両立
- ノーベント:フォーマルでミニマルなスタイルを求める場面に最適
ジャケット選びの際は、用途や体型、好みのスタイルに合わせてベントの種類にも目を向けることで、仕上がりの印象が大きく変わります。
以上、ジャケットのベントについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
