ワイシャツの語源:「white shirt(ホワイトシャツ)」がなまった和製英語
「ワイシャツ」という言葉は、英語の “white shirt(ホワイトシャツ)” が由来です。
明治時代の日本では、欧米の洋装文化が少しずつ広まっていました。
当時、外国人が着ていた真っ白なシャツが非常に印象的だったことから、「ホワイトシャツ」という英語を耳にして日本人が発音しやすい形にしたのが「ワイシャツ」です。
つまり、もともと「ワイシャツ」とは文字通り「白いシャツ」、すなわち白無地のドレスシャツを指していました。
清潔さや格式を象徴するアイテムとして、ビジネスや礼装の場で着られていたのです。
歴史的背景:白シャツ=近代的で清潔な象徴
明治・大正期、日本は欧米化が進み、洋服が文明開化の象徴となっていました。
そのなかで「白いシャツ」は特に清潔で上品な印象を与えるとされ、上流階級や知識人の間で流行します。
学校や官公庁でも制服として採用され、次第に「白シャツ=社会的信用の証」という価値観が形成されました。
これが「white shirt → ワイシャツ」という呼称が一般化した背景です。
現代の意味:ビジネスシャツ全般を指す言葉に
時代が進むにつれ、「ワイシャツ」は単に白いシャツを指す言葉ではなくなりました。
現在では、スーツやジャケットの下に着る襟付きのシャツ全般 を「ワイシャツ」と呼びます。
そのため、白無地はもちろん、淡いブルーやピンク、ストライプ柄、チェック柄なども含めて、ビジネスシーンで着るドレスシャツはすべて「ワイシャツ」と認識されています。
つまり、現代日本において「ワイシャツ」は “dress shirt” のニュアンスに近いのです。
英語では通じない「ワイシャツ」
注意が必要なのは、「ワイシャツ」はあくまで和製英語だということです。
英語で “Y-shirt” と言っても、英語圏の人には通じません。
英語で表現する場合は、以下のように言い換えるのが適切です。
| 日本語の意味 | 英語表現 | 補足 |
|---|---|---|
| 白いワイシャツ | white dress shirt / white shirt | 元々の語源に最も近い |
| ビジネス用のワイシャツ | dress shirt | 一般的なビジネス用シャツ |
| カジュアルなボタンダウンシャツ | button-down shirt | ビジネスカジュアル寄り |
このように、「ワイシャツ=Y-shirt」は日本独自の呼称である点を覚えておくとよいでしょう。
カッターシャツとの違いと由来
「カッターシャツ」という呼び方もよく耳にしますが、これは関西地方を中心に使われている表現です。
この言葉の起源は、スポーツメーカー・ミズノ(旧・水野兄弟商会) が1918年ごろに発売したシャツの商標名「カッターシャツ」にあります。
「カッター(Cutter)」は英語ではなく、野球の応援で叫ばれる『勝った、勝った!』という声をもじった造語。
当時のミズノが、「勝負に勝つ」=「勝った」から着想を得て商品名に採用したものです。
この商標が大ヒットし、西日本を中心に一般名詞化して「カッターシャツ=ワイシャツ」と呼ばれるようになりました。
「シャツ」「ワイシャツ」「カッターシャツ」の違いまとめ
| 呼び方 | 主な意味 | 備考 |
|---|---|---|
| ワイシャツ | スーツの下に着る襟付きのビジネスシャツ | 全国的に使用される |
| カッターシャツ | 西日本での呼称。ミズノの商標が由来 | 「勝った」→「カッター」から命名 |
| シャツ | もっと広義で、Tシャツやカジュアルシャツも含む | 用途によって意味が広い |
別説:襟の形が「Y」に見える説
なお、「ワイシャツ」という言葉には、少数派ながら「襟を開いた形がY字に見えるから」という説も存在します。
しかし、歴史的・語源的な根拠が乏しく、辞書や専門書ではほぼ採用されていません。主流はあくまで「white shirt 語源説」です。
まとめ
- 「ワイシャツ」は英語の “white shirt(ホワイトシャツ)” が語源。
- 当初は白いドレスシャツを指していたが、現在はビジネス用シャツ全般を意味する。
- 英語では “Y-shirt” は通じず、dress shirt が正しい表現。
- 「カッターシャツ」はミズノが命名した商標が由来で、「勝った(カッター)」から生まれた言葉。
- 「シャツ」はもっと広い意味で、Tシャツなども含む。
以上、ワイシャツはなんの略なのかについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
