ワイシャツにうっかりペンのインクが付いてしまった、そんなとき焦ってこするとかえって染みが広がることがあります。
インク染みは、ペンの種類ごとに成分が違うため、落とし方も異なります。
この記事では、インクのタイプ別の処置方法から、外出先での応急対応、素材ごとの注意点まで、詳しく解説します。
目次
ペンの種類とインクの性質を見極めよう
まず大切なのは「どんなペンで汚れたのか」を知ることです。
インク成分によって最適な溶剤が変わります。
| ペンの種類 | インクの性質 | 有効な溶剤・洗剤 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 油性ボールペン | 油溶性インク(顔料) | エタノール・除光液 | 水ではほとんど落ちない |
| 水性ボールペン | 水溶性インク | 水・中性洗剤 | 比較的落としやすい |
| ゲルインクペン | 顔料+増粘剤(半油性) | アルコール+中性洗剤 | 落ちにくいが洗剤併用で改善 |
| サインペン・マーカー | アルコール溶剤系 | アルコール・専用シミ抜き剤 | 色素が強く、繊維に浸透しやすい |
| 万年筆 | 水溶性染料 | 水・中性洗剤・酸素系漂白剤 | 比較的容易に落とせる |
外出先でできる応急処置
外出中にペン染みが付いたときは、すぐに次の対応を行うと、後の処理が格段にラクになります。
- ティッシュやハンカチで軽く押さえる
こすらず“押さえる”ことが大切。インクを吸い取るように優しく処理しましょう。 - アルコール入りウェットティッシュでトントン叩く
油性成分を分解できます。色柄物の場合は、まず目立たない箇所で色落ちテストを。 - 水性インクなら冷水で裏側からすすぐ
熱湯はNG。高温はインクが繊維に定着する原因になります。
自宅での洗浄手順(タイプ別)
油性ボールペンの場合
- タオルやキッチンペーパーを裏に敷く
- エタノール(または消毒用アルコール)を綿棒に含ませ、中心から外へ向かって叩く
- 浮いてきたインクを当て布に移すように処理
- 液体中性洗剤で軽く揉み洗い → 冷水ですすぐ
- 通常通り洗濯機へ
除光液を使う場合はアセトンフリータイプを使用し、パッチテストを必ず実施してください。
※アセテート・トリアセテート生地では使用厳禁です。
水性ボールペン・万年筆インクの場合
- 冷水で裏側からしっかりすすぐ
- 液体中性洗剤を直接塗布し、指で優しく押し洗い
- 酸素系漂白剤(色柄可・要テスト)に10〜15分浸す
- よくすすいでから通常洗濯
酸素系漂白剤は白・色柄ともに使用可能ですが、必ず色落ちテストを行いましょう。
ゲルインクペンの場合
- 当て布を敷き、アルコールを少量ずつ点着しながら叩く
- 液体洗剤を併用して軽く揉み洗い
- 落ち残りがあれば酸素系漂白剤で再処理
ゲルインクは粘度が高く、アルコール単独では落ちにくいため、洗剤併用が効果的です。
サインペン・マーカーの場合
- アルコールを綿棒に含ませ、当て布に移すように叩く
- 市販の衣類用インク専用シミ抜き剤を表示に従って使用
- 必要に応じて酸素系漂白剤で仕上げ
ヘアスプレーを使う方法は古い家庭法ですが、樹脂が残留しやすく再汚染の原因になるため非推奨です。
素材別の注意点
| 素材 | 注意点 |
|---|---|
| 綿(コットン) | 比較的強く、アルコール使用OK |
| ポリエステル | 熱でインクが定着しやすいため乾燥機NG |
| 麻(リネン) | 擦ると毛羽立つ。優しく押し洗いを |
| シルク・ウール | 自宅での溶剤・漂白剤使用は避け、クリーニング店へ |
| アセテート/トリアセテート | アセトン(除光液)厳禁。変形の恐れあり |
| プリント・刺繍部分 | 溶剤でにじむ可能性あり。必ずパッチテスト |
注意すべき共通ルール
- 完全に落ちるまで熱を加えない(乾燥機・アイロン厳禁)
- こすらず叩く(摩擦で繊維に染み込む)
- 当て布を裏に敷いて、上からトントン叩く(裏へインクを移すイメージ)
- 冷水スタートが鉄則(熱で色素が固定されるため)
どうしても落ちない場合の最終手段
- 酸素系漂白剤を40℃以下のぬるま湯に溶かし、1〜2時間つけ置き
- それでも残る場合は染み抜き専門のクリーニング店へ持ち込み
持ち込む際は、
- 付いた時期
- 使用したペンの種類
- 自分で試した処理方法
を伝えると、プロが適切な薬剤を選びやすくなります。
ペン染みを防ぐための予防策
- ペンをポケットに入れる前にキャップの密閉を確認
- 胸ポケットの裏に防水布や補修布を縫い付ける
- インク漏れ防止構造(加圧式など)のペンを選ぶ
- ペンの先を上向きにして持ち歩く
まとめ
| 状況 | 対処法 |
|---|---|
| 外出中 | ティッシュで押さえ、アルコールで軽く叩く |
| 油性ボールペン | アルコールまたは除光液で叩き → 洗剤で洗う |
| 水性・万年筆 | 冷水すすぎ → 中性洗剤 → 酸素系漂白剤 |
| ゲルインク | アルコール+洗剤で叩く → 落ち残りは漂白 |
| サインペン | アルコールまたは専用シミ抜き剤で処理 |
| 白・色柄シャツ | 酸素系漂白剤OK(色落ちテスト必須) |
| 全素材共通 | 熱を加えるのは絶対NG! |
ペン染みは、落とすタイミングと正しい順序が命です。
「早く・こすらず・冷たく」が三原則。
焦らず手順通りに行えば、多くのインク汚れは家庭でも十分対応できます。
以上、ワイシャツにペン染みが付いたときの対処法についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
