喪服を着る際の化粧は、故人を悼む場にふさわしい、控えめで清潔感のある仕上がりが基本です。
通夜や葬儀・告別式は、自分を華やかに見せる場ではありません。
そのため、普段のメイクよりも色、艶、輝き、濃さを抑え、自然な印象に整えることが大切です。
一般的には薄化粧が適しているとされていますが、化粧は絶対にしなければならないものではありません。
肌が敏感な人や、普段から化粧をしない人、体調や健康上の事情がある人は、無理に化粧をする必要はありません。
大切なのは、化粧をしているかどうかではなく、髪や肌、爪などを含めて、全体を清潔に整えることです。
なお、弔事の化粧に全国共通の厳密な決まりがあるわけではありません。
地域や宗教、宗派、家族の考え方によって受け止め方が異なる場合があります。
喪服に合わせる化粧の基本的な考え方
色を抑える
葬儀の場では、鮮やかな色や目立つ色を避けるのが基本です。
赤やピンク、オレンジなどは、色味や発色によっては華やかな印象になります。
ただし、色の名称だけで一律に判断するのではなく、実際に顔に塗ったときに目立つかどうかを基準に考えましょう。
肌や唇になじむ落ち着いた色であれば、薄く使用しても問題になりにくい傾向があります。
艶や輝きを抑える
弔事では、ラメやパール、グロス、ハイライトなど、光を反射して華やかに見える化粧は避けるのが無難です。
肌本来の自然な艶まで完全に消す必要はありませんが、濡れたような艶肌や、強いハイライトで立体感を強調する仕上げは控えましょう。
濃さを抑える
アイライン、マスカラ、眉、口紅などを濃くすると、色が落ち着いていても化粧そのものが目立ちます。
普段のメイクから工程や使用量を減らし、「化粧をしていることが強く伝わらない程度」を目安にするとよいでしょう。
香りを抑える
香水や香りの強い化粧品、ヘアスプレー、柔軟剤などにも注意が必要です。
葬儀会場では、多くの人が近い距離で長時間過ごします。
香りに敏感な人への配慮としても、香水はつけず、香りの強い製品は避けるのが安心です。
ベースメイクは薄く自然に仕上げる
厚塗りは避ける
ファンデーションを何度も重ねると、作り込んだ印象が強くなります。
化粧下地と薄付きのファンデーション、またはフェイスパウダーを使い、肌の色むらを自然に整える程度に仕上げましょう。
クマ、シミ、赤みなどが気になる場合は、顔全体を厚く塗るのではなく、コンシーラーで必要な部分だけを補う方法が適しています。
強い艶肌は避ける
葬儀では、強い光沢を出すベースメイクは控えるのが無難です。
次のような化粧品は、光の当たり方によって華やかに見えることがあります。
- パール入りの化粧下地
- 艶が強く出るファンデーション
- ラメ入りのフェイスパウダー
- 強いハイライト
- 濡れたような艶を出す化粧品
完全なマット肌にする必要はありませんが、顔全体が強く光らないよう、必要に応じてフェイスパウダーで軽く抑えましょう。
顔だけ白くならないようにする
トーンアップ効果の強い下地や、肌より明るすぎるファンデーションを使用すると、顔だけが白く浮いて見えることがあります。
ファンデーションは、首や胸元の色となじむ自然な色を選びましょう。
眉毛は自然な形と色に整える
眉毛は、顔の印象を大きく左右します。
濃く描いたり、輪郭をはっきり取りすぎたりすると、目元が強調されます。
眉毛の足りない部分を補う程度に、自然に仕上げましょう。
色は、髪色や地眉になじむ、明るすぎないものを選びます。グレー、ダークブラウン、自然なブラックなどが使いやすいでしょう。
黒髪であっても、真っ黒なアイブロウで眉を濃く塗りつぶす必要はありません。
自分の眉毛と自然になじむ色を選ぶことが大切です。
眉マスカラを使用する場合は、明るい茶色や赤み、黄みの強い色を避け、眉毛が目立ちすぎないようにします。
アイメイクは必要最小限にする
アイシャドウは使用しなくてもよい
葬儀の化粧では、アイシャドウは必須ではありません。
使わずに、眉と肌だけを整えても問題ありません。
使用する場合は、ベージュ、グレージュ、薄いブラウンなど、肌になじむ落ち着いた色を選びましょう。
まぶたの色むらを整える程度に薄く塗り、目元を大きく見せるようなグラデーションや、濃い締め色は避けます。
ラメや強いパールは避ける
大粒のラメや、光沢の強いパール入りアイシャドウは、照明の下で目立ちやすいため弔事には不向きです。
細かなパールでも、塗る範囲や光の当たり方によって華やかに見えることがあります。
できるだけマットな質感を選ぶと安心です。
鮮やかな発色を避ける
色名だけで判断するのではなく、実際の発色を基準に考えます。
赤、ピンク、オレンジ、青、紫などの色でも、鮮やかに発色するものや、目元を強く印象づけるものは避けましょう。
肌になじむ淡いベージュピンクなどであれば、薄く使用する範囲では問題になりにくい場合もあります。
アイラインは細く控えめに引く
アイラインも必須ではありません。
使用する場合は、黒やダークブラウンで、まつ毛の隙間を埋める程度に細く引きます。
目尻を長く伸ばす、上向きに跳ね上げる、目の周囲を囲むなど、目元を強調する引き方は避けるのが無難です。
普段アイラインを使わない人は、葬儀のために無理に使用する必要はありません。
マスカラは薄く仕上げる
マスカラも、葬儀で必ず使用しなければならないものではありません。
使用する場合は、黒またはダークブラウンを選び、まつ毛の色や毛流れを整える程度に薄く塗ります。
次のような仕上げは避けましょう。
- 何度も重ね塗りする
- まつ毛を長く見せすぎる
- ボリュームを強調する
- 束感を目立たせる
- カラーマスカラを使う
涙による化粧崩れが心配な場合は、にじみにくい製品を選ぶと実用的です。
ただし、ウォータープルーフ製品でも、皮脂や摩擦によって落ちることがあります。
濃く塗って崩れに備えるのではなく、最初から薄く仕上げることが大切です。
つけまつ毛やまつ毛エクステのマナー
つけまつ毛は避けるのが無難
葬儀当日に新たにつけまつ毛を付けると、目元が華やかに見える可能性があります。
普段から使用している場合でも、弔事ではできるだけ使用を控えるのが無難です。
まつ毛エクステは無理に外さなくてもよい
すでにまつ毛エクステをしている場合、葬儀のためだけに必ず外さなければならないという決まりはありません。
自分で無理に外すと、まつ毛やまぶたを傷める可能性があります。
まつ毛エクステが目立つ場合は、アイシャドウ、アイライン、マスカラを省くなど、ほかのアイメイクを控えて全体のバランスを調整しましょう。
チークは省略するか薄く使用する
チークは、顔色を明るく見せる化粧品です。
そのため、塗り方によっては健康的で華やかな印象が強くなります。
葬儀ではチークを使用しなくても問題ありません。
顔色が悪く見える場合は、ベージュ系や落ち着いたローズ系など、肌になじむ色をごく薄く使用します。
チークを塗っていることがはっきり分かるほど濃く入れたり、頬の高い位置に広く入れたりするのは避けましょう。
ラメやパール入りのチーク、濡れたような艶が出るチークも控えるのが無難です。
口紅は落ち着いた色を薄く塗る
口紅は必須ではない
葬儀では、口紅を必ず塗らなければならないわけではありません。
唇の色が自然であれば、無色のリップクリームだけでも構いません。
ただし、唇の血色が悪く見える場合は、肌や唇になじむ色を薄く塗ると、自然で整った印象になります。
鮮やかな色は避ける
赤、濃いピンク、鮮やかなオレンジなど、唇だけが目立つ色は避けましょう。
使用する場合は、次のような落ち着いた色が適しています。
- ベージュ系
- ベージュピンク系
- ローズベージュ系
- 唇の色に近い薄いピンク
- 肌になじむ落ち着いた色
ただし、同じベージュやブラウンでも、発色が濃いものや、唇の輪郭が強く目立つものは弔事向きとは限りません。
色名ではなく、実際に塗ったときに唇だけが目立たないかを確認しましょう。
グロスや強い艶は避ける
グロスやラメ入りリップは、唇に光沢を与えるため、弔事では避けるのが無難です。
口紅を使用する場合は、マットまたはセミマットな質感を選びます。
手持ちの口紅に艶がある場合は、塗った後にティッシュで軽く押さえると、発色と光沢を抑えられます。
透明なリップクリームでも、強い艶が出るものは、塗った後にティッシュで軽く押さえると自然です。
カラーコンタクトは目立たないものを選ぶ
カラーコンタクトに明確な禁止規則があるわけではありません。
しかし、瞳を大きく見せるものや、色や縁取りがはっきり分かるものは、華やかに見える可能性があります。
弔事では、透明なコンタクトレンズや眼鏡を使用するのが無難です。
視力矯正のためにカラーコンタクトを使用する場合は、裸眼との差が目立たず、瞳の大きさや色を強調しない自然なものを選びましょう。
涙による化粧崩れにも注意する
通夜や葬儀では、涙を流すこともあります。
マスカラやアイラインがにじむと、目元やハンカチが黒く汚れる可能性があります。
そのため、アイメイクをする場合は、崩れにくい製品を薄く使用しましょう。
特に崩れやすい部分は、次のとおりです。
- マスカラ
- アイライン
- 眉
- 目元のファンデーション
- コンシーラー
涙を拭く際は、目元を強くこすらず、ハンカチやティッシュをそっと押し当てます。
化粧崩れが心配だからといって、ファンデーションやマスカラを濃く重ねると、崩れたときにかえって目立ちます。
最初から薄く仕上げておくことが大切です。
喪服に合わせる化粧で避けたいもの
葬儀では、次のような化粧は避けるのが無難です。
- 大粒のラメ
- 強いパール
- 鮮やかなアイシャドウ
- 強いハイライト
- 濡れたような艶肌
- 太いアイライン
- 跳ね上げたアイライン
- 目を囲むアイメイク
- 濃いマスカラ
- つけまつ毛
- 鮮やかなチーク
- 真っ赤な口紅
- 光沢の強いグロス
- 派手なカラーコンタクト
- 香りの強い化粧品
色が落ち着いていても、艶や輝きが強いと華やかに見えることがあります。
色、艶、濃さのいずれかが目立っていないか、鏡で全体を確認しましょう。
ネイルにも配慮する
派手なネイルは可能であれば落とす
喪服を着る際は、化粧だけでなく手元にも注意します。
次のようなネイルは、弔事では目立ちやすいため、可能であれば事前に落としましょう。
- 赤や鮮やかなピンク
- 黒などの濃い色
- 大粒のラメ
- ストーン
- 立体的な装飾
- 派手なネイルアート
- 長いネイルチップ
- 強い光沢や厚みのあるネイル
透明やベージュ系でも、爪が極端に長い場合や、強い艶、厚み、装飾が目立つ場合は、弔事向きとはいえません。
自然なネイルであれば問題になりにくい
自爪に近い透明やベージュ系で、爪が短く、装飾や強い光沢が目立たない状態であれば、問題視されにくい傾向があります。
ただし、地域や家族の考え方によっては、ネイル自体を控えたほうがよいとされる場合もあります。
迷う場合は、落として自爪を短く整えるのが最も安心です。
ネイルを落とせない場合の対処法
ジェルネイルなどをすぐに落とせない場合は、ネイル用コンシーラーや不透明なベージュ系カラーで、色を目立ちにくくできる場合があります。
ただし、次のようなネイルは、上から色を重ねても十分に隠せません。
- 濃い色
- ラメ
- ストーン
- 立体的な装飾
- 長さ出しをしているネイル
- 表面に凹凸があるネイル
また、急いでマニキュアを重ねると、乾ききらずに喪服やバッグを汚す可能性があります。
上からベージュ色を塗れば必ず隠せるわけではないため、あくまで応急的な方法として考えましょう。
黒い手袋は補助的な方法
黒いフォーマル手袋でネイルを隠す方法もありますが、完全な対処法ではありません。
葬儀では、次のような場面で手袋を外すことがあります。
- 焼香
- 合掌
- 献花
- 玉串奉奠
- 受付での記帳
- 香典を渡す場面
- 会食
- 骨上げ
また、日本の葬儀では、一般参列者が手袋を着用する習慣があまり一般的でない場合もあります。
そのため、手袋は一時的な補助として考え、可能であればネイルを落とすか、目立たない状態に整えるほうが確実です。
香水や香りの強い製品は避ける
葬儀では、香水をつけないのが無難です。
香水以外にも、次のような製品の香りに注意しましょう。
- 香りの強いヘアスプレー
- 香りの強い整髪料
- ボディクリーム
- ハンドクリーム
- 柔軟剤
- 制汗剤
- 香り付きの化粧品
葬儀会場では、多くの人が長時間同じ空間で過ごします。
香りに敏感な人もいるため、できるだけ無香料または香りの弱い製品を選びましょう。
学生や若い人は無理に化粧をしなくてもよい
中学生や高校生は、基本的に化粧をしなくても問題ありません。
肌荒れやニキビなどが気になる場合は、色のつかない日焼け止めや、薄いフェイスパウダーで整える程度で十分です。
大学生や社会人であっても、普段から化粧をしない人が、葬儀のために無理にフルメイクをする必要はありません。
年齢にかかわらず、肌と眉を自然に整え、必要に応じて唇の血色を補う程度で問題ありません。
年齢よりも自然さと清潔感を優先する
弔事の化粧は、年齢によって厳密に方法が決まっているわけではありません。
顔色が悪く見えやすい人は、ベースメイクや口紅で血色を自然に補うと、整った印象になります。
一方で、普段から化粧をしない人や、肌への負担を避けたい人は、眉や髪を整えるだけでも構いません。
年齢別の決まりに合わせるよりも、本人の肌の状態や普段の習慣に合わせ、無理なく自然に整えることが大切です。
通夜と葬儀・告別式で化粧のマナーは違うのか
基本的な考え方は同じ
通夜も葬儀・告別式も、化粧は控えめにするのが基本です。
通夜だからといって、派手な化粧が許されるわけではありません。
急な参列では完璧に整えなくてもよい
通夜は、仕事先や外出先から急いで駆けつける場合があります。
そのような場合は、化粧をすべてやり直せなくても、次のような対応を可能な範囲で行えばよいでしょう。
- 鮮やかな口紅をティッシュで軽く落とす
- 強いラメを可能な範囲で抑える
- 顔の艶をフェイスパウダーで軽く抑える
- 派手なアクセサリーを外す
- 香水を追加でつけない
身支度を完璧に整えることよりも、遺族に負担をかけず、静かに参列することを優先します。
遺族や親族の化粧も控えめにする
遺族や親族も、基本的には一般参列者と同じく、控えめな化粧が適しています。
ただし、看病や葬儀の準備などで心身ともに疲れている場合もあります。
化粧をする余裕がないからといって、失礼に当たるわけではありません。
可能な範囲で、次の部分を自然に整えれば十分です。
- 肌
- 眉
- 髪
- 唇
- 爪
長時間参列者への対応をする場合は、ティッシュ、ハンカチ、フェイスパウダーなど、最低限の化粧直し用品を用意しておくと安心です。
弔事のために最低限用意する化粧品
葬儀のために、フルメイク用の化粧品を新しくそろえる必要はありません。
最低限必要になる可能性があるのは、次のようなものです。
- 薄付きのファンデーションまたはフェイスパウダー
- 必要に応じてコンシーラー
- 自然な色のアイブロウ
- 必要に応じて落ち着いた色のリップ
- ティッシュ
- ハンカチ
- 綿棒
アイシャドウ、アイライン、マスカラ、チークは必須ではありません。
普段使用していない人は、無理に取り入れなくても問題ありません。
喪服に合う化粧の手順
基本となる手順
喪服に合わせる化粧は、次のような流れで十分です。
- 化粧下地を薄く塗る
- ファンデーションやフェイスパウダーで肌を自然に整える
- クマや赤みが気になる部分だけをコンシーラーで補う
- 艶が強い部分をパウダーで軽く抑える
- 眉毛の足りない部分を自然に描く
- 必要に応じて、唇になじむ色を薄く塗る
- 口紅の艶や発色が強い場合はティッシュで押さえる
必要に応じて加えるもの
アイシャドウ、アイライン、マスカラ、チークは、必要に応じて使用します。
使う場合も、顔全体を見たときに、その部分だけが強調されないようにしましょう。
鏡を見たときに、最初に化粧が目に入るのではなく、自然に身だしなみが整って見える程度が目安です。
葬儀の化粧をするときは「引き算」を意識する
喪服に合わせる化粧に迷ったときは、普段のメイクから次の要素を減らしていきましょう。
- 色
- 艶
- 輝き
- 濃さ
- 香り
- 使用する化粧品の数
普段使用している化粧品でも、量を減らしたり、一部の工程を省いたりすることで、弔事にふさわしい落ち着いた印象に近づけられます。
まとめ
喪服を着る際の化粧は、華やかさを抑えた自然な薄化粧が基本です。
ベースメイクは薄く仕上げ、眉は自然に整えます。
アイシャドウ、アイライン、マスカラ、チークは必須ではありません。
口紅を使用する場合は、唇になじむ落ち着いた色を薄く塗り、艶を抑えましょう。
ラメ、強いパール、鮮やかな色、濃いアイメイク、グロス、派手なカラーコンタクトは避けるのが無難です。
ただし、化粧は絶対に必要なものではありません。
肌や体調、普段の習慣に応じて、無理のない範囲で整えれば十分です。
弔事の化粧で最も大切なのは、自分を華やかに見せることではなく、故人と遺族への敬意を表し、周囲に配慮した清潔感のある身だしなみにすることです。
以上、喪服を着る際の化粧のマナーについてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










