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タキシードの由来について

タキシードは、結婚式や公式晩餐会、ガラパーティーなどで着用される夜の準礼装(ブラックタイ)として、現在も世界共通のドレスコードとして位置づけられています。

一見すると伝統的で完成された服装に見えますが、その成立過程をひもとくと、19世紀後半に起きた紳士服の価値観の変化が色濃く反映された衣服であることが分かります。

タキシードは「最初から正装として完成していた服」ではなく、格式と実用性の間で模索された結果、生まれた新しい夜の服でした。

目次

タキシード誕生以前:夜の正装は燕尾服が絶対だった

19世紀中頃まで、夜の正式な社交の場で男性が着る服は、燕尾服(テールコート)が事実上の標準でした。

燕尾服は、

  • 後ろ裾が燕の尾のように長く割れたデザイン
  • 白いウエストコートと白蝶ネクタイ
  • 王侯貴族や外交の場にふさわしい厳格な様式

を特徴とし、夜の正礼装(ホワイトタイ)として最高位に位置づけられていました。

しかし一方で、燕尾服は動きにくく、長時間の晩餐や社交には不向きという実用面での問題も抱えていました。

19世紀後半になると、上流階級の社交はより頻繁になり、「格式を保ちつつ、もう少し快適に着られる夜の服」を求める流れが徐々に強まっていきます。

イギリスで生まれた原型:ディナージャケット

タキシードの原型とされるのが、ディナージャケット(Dinner Jacket)またはディナースーツです。

この服の成立については、服飾史の分野で広く知られている通説があります。

19世紀半ば、当時イギリス皇太子であったエドワード7世が、ロンドン・サヴィル・ロウの仕立て屋Henry Poole & Co.に対し、次のような趣旨の上着を注文したとされています。

  • 燕尾服ほど厳格ではない
  • 丈を短くし、動きやすい
  • 夜の晩餐にふさわしい品格は保つ

この依頼によって仕立てられた短丈の夜用上着が、ディナージャケットと呼ばれるようになり、後のタキシードの直接的な祖型になったという説明です。

この説はHenry Poole社の記録に基づくもので、「断定的な一次史料」とまでは言えないものの、現在もっとも整合性の取れた説明として広く受け入れられています。

スモーキングジャケットとの違い

タキシードの由来を語る際に、しばしば混同されるのがスモーキングジャケットとの関係です。

スモーキングジャケットとは、本来、

  • 自宅の喫煙室で
  • タバコの匂いや灰から衣服を守るために着る
  • 室内用のくつろぎ着

として用いられた衣服です。

一方で、ディナージャケットは社交の場で着る正式な夜の服であり、用途が異なります。

両者は、

  • 喫煙文化
  • 快適さを重視する発想

という点で近縁関係にありますが、現代のタキシードはスモーキングジャケットそのものではなく、ディナージャケットの系譜に属すると整理するのが服飾史としては正確です。

「タキシード」という名称はアメリカで生まれた

タキシード・パークでの出来事

“タキシード”という呼び名が定着したのは、アメリカです。

1886年、ニューヨーク州の高級住宅地タキシード・パークにある社交クラブ「Tuxedo Club」で舞踏会が開かれました。

この場で、燕尾服の「尾」を省いた短丈の夜会用上着を着用した若い紳士が現れ、社交界の注目を集めます。

この人物については諸説ありますが、複数の資料でロレラード家(Lorillard家)、特にGriswold Lorillardの名が挙げられています。

なぜ「タキシード」と呼ばれるようになったのか

当時のアメリカでは、夜の正装といえば燕尾服が当然でした。

そのため、

  • 「あの短い上着は何だ?」
  • 「タキシード・パークで着られていた服だ」

という形で、地名に由来して “tuxedo” と呼ばれるようになったと考えられています。

重要なのは、

  • 服の原型はイギリスで成立した
  • 名称と流行の拡大はアメリカで起こった

という役割分担です。

燕尾服とタキシードの位置づけの違い

両者の関係を整理すると、次のようになります。

  • 燕尾服(ホワイトタイ)
    → 夜の正礼装。最上位の格式
  • タキシード(ブラックタイ)
    → 夜の準礼装。格式と実用性の両立

タキシードは、燕尾服の格式を維持しながら、近代的な快適さを取り入れた服として確立しました。

この「一段階下げることで、現実的にした」という発想こそが、タキシードが世界標準として普及した最大の理由と言えます。

まとめ:タキシードは近代化された正装である

タキシードの由来を、史実に即して簡潔にまとめると次のようになります。

  • 原型は19世紀イギリスのディナージャケット
  • 名称と流行は19世紀後半のアメリカで定着
  • 燕尾服に代わる「実用的な夜の正装」として普及

タキシードは単なる礼装ではなく、格式と合理性を両立させようとした近代紳士文化の結晶です。

その背景を知ることで、タキシードは「着るルール」ではなく、なぜそうあるべきかを理解して着る服として、より意味を持つものになるでしょう。

以上、タキシードの由来についてでした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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