ポロシャツの「ポロ」は、馬に乗りながらスティックでボールを打ち合う球技、ポロ競技に由来します。
現在のポロシャツは、襟が付いた半袖のニットシャツを指すのが一般的です。
しかし、昔のポロ選手が現在とまったく同じ形のシャツを着ていたわけではありません。
ポロ競技で着用されていた襟付きシャツの実用的な工夫が、ボタンダウンシャツやテニスウェアに影響を与え、長い時間をかけて現在のポロシャツへと発展していきました。
そのため、ポロシャツの歴史を理解するには、名前の由来と現在の形が完成するまでの経緯を分けて考えることが大切です。
「ポロ」という競技名の語源
「ボール」を意味する言葉が由来とされている
競技名の「polo」は、チベット諸語に属するバルティ語などで、ボールを意味する言葉に由来するとされています。
語源については資料によって表記に違いがあり、チベット語の「pulu」やバルティ語の「polo」に由来すると説明される場合があります。
いずれも、競技で使用するボールに関係した言葉である点は共通しています。
言葉の流れを簡単にまとめると、次のようになります。
ボールを意味する言葉から競技名の「ポロ」が生まれ、その競技で着用されるシャツが「ポロシャツ」と呼ばれるようになったと考えられています。
昔のポロ選手が着ていたシャツ
現代のポロシャツとは形が異なっていた
19世紀ごろのポロ選手は、現在のような半袖の鹿の子シャツではなく、長袖の襟付きシャツを着用していました。
ポロは馬に乗って激しく動く競技です。
そのため、競技中に襟が風でばたついたり、顔に当たったりすることがありました。
そこで選手たちは、襟先が動かないように身頃へ留める工夫をしていたとされています。
ポロ競技の服装がボタンダウンシャツに影響した
ポロ選手が襟を留めている姿を見て、ブルックス ブラザーズのジョン・E・ブルックスが着想を得たとされています。
その後、襟先をボタンでシャツ本体に固定するボタンダウンカラーが商品化されました。
このことから、ポロ競技の服装は、現在のポロシャツだけでなく、ボタンダウンシャツの誕生にも影響を与えたといえます。
ただし、ボタンダウンシャツと現在一般的に呼ばれるポロシャツは、基本的には別の衣服です。
ポロ競技の服装から、それぞれ異なる種類のシャツが発展したと理解するのが適切です。
現代的なポロシャツを広めたルネ・ラコステ
テニスウェアとして改良された
現在のポロシャツに近い形を確立し、広く普及させた人物として知られているのが、フランスのテニス選手ルネ・ラコステです。
当時の男子テニスでは、長袖シャツやロングパンツなど、現在と比べて動きにくい服装が一般的でした。
ラコステは、より快適にプレーできるように、半袖で柔らかい襟が付き、胸元に短い前立てを備えたシャツを採用しました。
また、通気性がよく、体を動かしやすい綿のプチピケ素材が使われました。
日本では、このような表面に細かな凹凸がある編み地を、一般に鹿の子と呼ぶことがあります。
1933年に「L.12.12」が展開された
ルネ・ラコステは1933年、実業家のアンドレ・ジリエとともに会社を設立しました。
その後、ラコステを代表するポロシャツ「L.12.12」が展開され、現在のポロシャツにつながるスタイルが広まっていきました。
「L.12.12」は、半袖、柔らかい襟、短い前立て、通気性のよいプチピケ素材を組み合わせたシャツです。
このデザインは、現代のポロシャツの基本形として広く知られています。
ルネ・ラコステはポロシャツの発明者なのか
「現代型の基本形を確立した人物」とするのが正確
ルネ・ラコステは、ポロシャツの発明者として紹介されることがあります。
ただし、ラコステが登場する以前から、ポロ競技では襟付きのシャツが着用されていました。
また、ポロ競技の服装から着想を得たボタンダウンシャツもすでに存在していました。
そのため、「ルネ・ラコステがポロシャツをゼロから発明した」と断定すると、歴史を単純化しすぎる可能性があります。
より正確には、ルネ・ラコステは、現在一般的にポロシャツと呼ばれる半袖ニットシャツの基本形を確立し、商品として普及させた人物といえます。
ポロシャツは複数の衣服の影響を受けている
現在のポロシャツは、一人の人物が突然生み出したものではありません。
ポロ競技で使われていた襟付きシャツの実用性、ボタンダウンカラーの発想、テニスウェアの動きやすさなどが組み合わさり、少しずつ現在の形へ発展しました。
そのため、ポロシャツの歴史は、ポロ競技とテニスの両方に深く関係していると考えられます。
テニス用に広まったのになぜポロシャツと呼ばれるのか
名前はポロ競技の歴史を受け継いでいる
現在型のポロシャツは、ルネ・ラコステによってテニスウェアとして広く知られるようになりました。
それにもかかわらず、テニスシャツではなくポロシャツという名称が一般的になった背景には、それ以前から存在していたポロ競技用の襟付きシャツがあります。
つまり、現在の形はテニスウェアとして発展した一方で、名称についてはポロ競技の歴史を受け継いでいると考えられます。
ただし、名称が定着した経緯には、地域や時代、ブランドによる呼び方の違いもあるため、単一の理由だけで説明することはできません。
テニスシャツやゴルフシャツと呼ばれることもある
英語では、一般的に「polo shirt」と呼ばれます。
一方で、用途によっては「tennis shirt」や「golf shirt」と呼ばれる場合もあります。
ただし、これらの言葉が指す衣服の範囲は、地域や時代によって異なります。
日本では、スポーツ用、仕事用、普段着を問わず、襟付きで胸元に短いボタン開きがある半袖のニットシャツを、広くポロシャツと呼ぶのが一般的です。
ラルフ・ローレンが名前の由来ではない
ポロシャツという名称はブランド誕生以前から存在した
ポロシャツと聞いて、ラルフ・ローレンの「Polo Ralph Lauren」を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、ポロシャツという名前が、ラルフ・ローレンから生まれたわけではありません。
ポロ競技に由来するシャツや、ルネ・ラコステによる現代型ポロシャツは、ラルフ・ローレンが代表的なポロシャツを発表する以前から存在していました。
ラルフ・ローレンの代表的なポロシャツが登場したのは1972年です。
そのため、ラルフ・ローレンはポロシャツを世界的な日常着として広めた重要なブランドの一つですが、名前の起源ではありません。
ブランド名の「Polo」と一般名称は区別する
ラルフ・ローレンにおける「Polo」はブランド名です。
一方、一般名称としての「ポロシャツ」は、特定のブランドに限定されません。
ラコステ、フレッドペリー、ラルフ・ローレンなど、さまざまなブランドがポロシャツを展開しています。
ブランド名の「Polo」と、衣服の種類を表す「polo shirt」は、分けて理解する必要があります。
ポロシャツの歴史を時系列で整理
19世紀ごろ
ポロ選手が、競技中に襟がばたつかないよう、襟先を身頃に留めたシャツを着用していました。
この服装が、後のボタンダウンカラーなどに影響を与えます。
1900年前後
ブルックス ブラザーズが、ポロ選手の襟の留め方から着想を得たボタンダウンシャツを商品化しました。
ただし、このシャツは現在の半袖ニット型ポロシャツとは異なる衣服です。
1920年代後半から1930年代
ルネ・ラコステが、従来のテニスウェアを動きやすく快適な形へ改良しました。
半袖、柔らかい襟、短い前立て、通気性のよいニット素材を組み合わせたデザインが、現在のポロシャツにつながります。
1933年
ルネ・ラコステとアンドレ・ジリエが会社を設立し、代表的なポロシャツ「L.12.12」を展開しました。
これにより、現代型ポロシャツの基本形が広く普及していきます。
1972年
ラルフ・ローレンが、豊富なカラーバリエーションを持つ代表的なポロシャツを発表しました。
これをきっかけに、ポロシャツはスポーツウェアだけでなく、日常着やファッションアイテムとしても広く定着していきました。
ポロシャツという名前の由来に関する注意点
昔のポロシャツと現在のポロシャツは同じではない
ポロシャツの名前はポロ競技に由来しますが、昔のポロ選手が現在と同じ半袖の鹿の子シャツを着ていたとは限りません。
初期のポロ選手が着ていたのは、主に長袖の襟付きシャツでした。
現在のポロシャツは、そこにテニスウェアとしての工夫が加えられ、発展したものです。
ボタンダウンシャツから直接変化したわけではない
ポロ競技は、ボタンダウンシャツと現代型ポロシャツの両方に影響を与えています。
しかし、ボタンダウンシャツがそのまま半袖のポロシャツへ変化したわけではありません。
両者は、ポロ競技の服装から別々の方向へ発展した衣服として捉えると分かりやすいでしょう。
発明者を一人に限定しないほうがよい
ポロシャツの歴史には、ポロ選手、ブルックス ブラザーズ、ルネ・ラコステ、アンドレ・ジリエ、ラルフ・ローレンなど、複数の人物やブランドが関わっています。
そのため、誰か一人を唯一の発明者とするよりも、長い時間をかけて複数のスポーツウェアから発展したと考えるほうが正確です。
まとめ
ポロシャツの名前は、馬に乗ってボールを打ち合う競技「ポロ」に由来します。
昔のポロ選手は、襟がばたつかないように工夫した長袖の襟付きシャツを着用していました。
その服装は、ボタンダウンシャツなどの誕生にも影響を与えています。
一方、現在一般的に知られている半袖のポロシャツは、フランスのテニス選手ルネ・ラコステが、動きやすいテニスウェアとして基本形を確立し、1933年以降に広く普及させたものです。
したがって、ポロシャツの歴史は、次のように整理できます。
名前の由来はポロ競技であり、現在の形を広めた中心人物はルネ・ラコステです。
ただし、ポロシャツは一人の人物が突然発明したものではありません。
ポロ競技の服装、ボタンダウンカラー、テニスウェアの改良などが影響し合い、現在の形へと発展した衣服です。
以上、ポロシャツの名前の由来についてでした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。










